Miles Davis『Water Babies』
マイルスの未発表音源は、1970年代当時は随分貴重なものだった。特に、1970年代前半はマイルスは、ほとんどスタジオ録音の音源をリリースしていない。加えて、1970年代後半は、長期間の隠遁時代で、そもそも新譜がリリースされなかった。そんな時代に、スタジオ録音の未発表音源は、マイルス者にとって、実に貴重なものだった。
このマイルスの未発表音源集も、リリース当時はセンセーショナルな話題を振り撒いたものだ。その未発表音源集とは、Miles Davis『Water Babies』(写真左)である。リリースは、1976年11月。1976年と言えば、マイルスの長期隠遁時代が始まった頃。僕は高校3年生。この未発表音源集のリリースはリアルタイムで覚えている。
水浴びをする黒人の子供達のイラストが印象的なジャケット。この頃のマイルスのアルバムって、アーティスティックなイラストが印象的なアルバムがほとんど。良いんですよね〜、このイラストのジャケット。
このマイルスの未発表音源集ですが、1曲目〜3曲目までが、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts,ss), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds) という、1960年代黄金のクインテットの面々の演奏。1967年6月の録音。
4曲目〜5曲目は、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts,ss), Chick Corea & Herbie Hancock (el-p), Dave Holland (b), Tony Williams (ds)。初代エレ・マイルスな面々の演奏。1968年11月の録音。
1曲目から4曲目までが、ウェイン・ショーターの曲。限りなく自由度の高いモーダルで幽玄な演奏が中心で、マイルスも良いが、やっぱり、ウェインのテナーが素晴らしい。というか、ウェインのリーダー作の様な雰囲気。ウェイン・ショーター・ソングブックの様相。これだけウェインが素晴らしいのだ。マイルスのアルバムへの収録を考えると、お蔵入りになるのも頷ける。
4曲目から5曲目のエレ・マイルスな演奏は、なかなか興味深い。チックとハービーで、エレピの使い方、弾き方が明らかに違う。チックは、エレピの特性を活かして、エレピをエレピとして弾く。ハービーは、エレピをエレピと思わず、エレピをアコピの様に弾く。当然、チックのエレピの方が印象深く、ハービーのエレピは、この時点では「微笑ましい」。このハービーの「微笑ましい」エレピを聴くと、アルバムへの収録を控え、お蔵入りになるのも頷ける。
そして、1曲目から5曲目、全編に渡って凄いパフォーマンスを発揮しているのが、ドラムのトニー・ウィリアムス。トニーは自由度の高いモーダルな4ビートから、エレ・マイルスに必須のロック基調の8ビートまで、縦横無尽、幽玄自在、大胆細心、硬軟自在に叩きまくる。凄い柔軟度。爽快な切れ味。この未発表音源集、意外とトニーのドラミングを愛でるに最適な一枚ではないでしょうか。
この未発表音源集、意外とマイルスが目立っていないんですね。キッチリ決めるところは決めて吹いているんですが、なんとなく、印象が薄い。マイルスのアルバムへの収録を考えると、お蔵入りになるのも頷ける。
全体の雰囲気は、ウェイン・ショーター・ソングブックという感じかな。全編に渡って、ウェインのブロウが大活躍です。これはまあ、マイルスのアルバムへの収録を考えると、お蔵入りになるのも頷ける。そんな『Water Babies』です。
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