こんなアルバムあったんや・22
暫く涼しい日が続いていたが、さすがに、我が千葉県北西部地方も暑さが厳しくなってきた。そんな陽気に合わせて、ちょっとマニアックなピアノ・トリオに「涼」を求める。
このアルバムのリーダーは、ピアノのヨーグ・ライダー(と読むらしい)。好きな曲ばかりがズラリと並んで、思わずCDショップで衝動買いの一枚です。そのアルバムとは、Joerg Reiter『Simple Mood』(写真左)。1985年の録音。ちなみにパーソネルは、Joerg Reiter (p), Thomas Stabenow (b), Klaus Weiss (ds)。トリオを構成する3人。全く馴染みの無い名前である。
このアルバム、澤野工房からのリリースである。さて、澤野工房とは。ちょっと簡単にすると、まず、大阪の新世界市場に「さわの履物店」という老舗の履物屋さんがあって、ここの4代目の若旦那の澤野由明さんがとってもジャズ好き。
で、澤野さんは履物屋は継いだけど、やっぱり自分はジャズに関わる仕事がしたいということで、設立したのが澤野商会という小さな輸入盤のレーベル会社。
でも、なかなか思うようには採算がとれずに、在庫をかかえて行き詰まる。最後の挑戦ということで、欧州ジャズの復刻盤5作品を、LPレコードで1000枚ずつ作ってリリースしたら、これがコアなジャズ者の間で口コミ評判が伝わって完売。
そして、そこから異色のレーベルとして頭角を現し、欧州ジャズのいわゆる「幻の名盤」を厳選し、澤野工房シリーズとして、月に1〜2枚のペースの復刻CD化でじわじわと売上を伸ばし、遂には、メジャー・レーベルに肩を並べるほどの存在になった。
そんな、欧州ジャズに強い澤野工房のアルバムの中で、僕が愛聴しているピアノ・トリオのアルバムの一枚が、このJoerg Reiter『Simple Mood』である。でも、このアルバムとの出会いは、CDショップで衝動買いでしたねえ。
それと言うのも、ジャズを聴き始めた頃から、僕は「Someday My Prince Will Come」という曲と「On Green Dolphin Street」という曲が大好きなのだが、その2曲が、アルバムの冒頭の1曲目から2曲目を飾っているのだから、もう僕としては、このアルバム、OKである(笑)。
そして、ジャズのベテランの方には「Someday My Prince Will Come」「On Green Dolphin Street」という曲名を聞くと、これはエバンス派のピアノ・トリオか、と思われるでしょうが、基本はズバリその通りです。
このアルバムのリーダー、ピアノのヨーグ・ライダー、基本はエバンス派、耽美的でリリカルな抑制的なピアノが特徴的ですが、実はそれだけではない。実にダイナミックで、実に拡がりのある演奏が素晴らしい。エネルギッシュな面と抑制の利いたリリカルな面がうまくミックスされて、実に熱気のあるライブ盤に仕上がっています。
ややもすれば綺麗すぎて、やや軽音楽的な表現になりがちな「Someday My Prince Will Come」「On Green Dolphin Street」を、ダイナミックで拡がりのある表現ですっ飛ばし、3曲目のバラードで、しっとりとチェンジ・オブ・ペース。
しっとりとした感じを引きずりながら、4曲目は、有名スタンダード曲の「Stella By Starlight」をダイナミック、かつ抑制の効いた展開で聴かせる。この曲では、ベースのトーマス・スタベノフが大活躍です。そして、5曲目と6曲目、8曲目はベースのトーマス・スタベノフのオリジナルで、そのダイナミックな展開は実に個性的。
時に爆発的に、時に耽美的に、時にリリカルに、時にブルージーに、このアルバムにおけるヨーグ・ライダー・トリオは自由自在だ。
この様な素晴らしいアルバムが、日本のメジャーレーベルから発売されずに、澤野工房のようなマイナー・レーベルから発売されている事実と、海外盤のラインナップを見渡すと、日本では知られていない素晴らしいアルバムがゴロゴロしているという事実。ジャズの奥深さと裾野の広さを感じずにはいられない。
まさに出会って聴いてみて、「こんなアルバムあったんや」という感じである。
大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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