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2013年7月17日 (水曜日)

「踏み絵」みたいな優秀盤

暑い夏の日には、難しいジャズは避けたい。絵に描いた様な、ジャズの基本に忠実な演奏が良い。Roy Haynes『Love Letters』(写真左)。2002年5月の録音。.ジャズを好きになる資質があるかどうか、それを見極める「踏み絵」みたいな優秀盤。

ジャズ初心者の方に、ジャズの楽しさ美しさを教えたいのなら、このアルバム。ハードバップ全盛期から現在まで、第一線で精力的に活躍しているドラマー、ロイ・ヘインズ。「彼の最新作に」ということで参加ミュージシャンを募ったところ、当代随一の名プレイヤー達が「是非」と諸手をあげて参加表明。とにかく、代表的と言われるミュージシャン達が勢揃いしていて、ワクワクする。

今回のセッションは、2つのグループの演奏で構成されている。テナー・サックス中心の、ジョシュア・レッドマン (ts), ケニー・バロン (p), クリスチャン・マクブライド (b) のカルテットと、ギター中心の、ジョン・スコフィールド (g), デヴィッド・キコスキ (p), デイヴ・ホランド (b) のカルテット。

モダンジャズの基本形の一つである「カルテット演奏」を、テナー中心とギター中心の2種類を楽しめるのが、このアルバムの美味しいところ。収録されたどの演奏もジャズの基本に忠実な演奏で、加えて、当代随一の名ミュージシャンが、その卓越したテクニックと豊かな歌心をベースに、スタンダード曲を演奏するのだから堪らない。

しかも、スタンダードを演奏するとはいえ、皆が知っている「ど・スタンダード曲」では無く、どの曲も、知る人ぞ知る隠れた名曲的なスタンダード曲なので、これも「通好み」で堪らない。 唯一、ラストのドラムソロの「シェイズ・オブ・セネガル2」のみ、ロイ・ヘインズのオリジナルです(このドラムソロが鬼気迫っていて、これまた良いのだ)。
 

Roy_haynes_love_letters

 
とりわけ、このアルバムのジョシュア・レッドマンのテナーについては「見直した」。当時のジョシュアといえば、ちょっと小難しい展開の演奏が中心だったので、彼のテナーを聴く度、ちょっとイライラしていたが、このアルバムでは、スカッとテナーを吹き切っている。

やっぱり、楽器は先ずは吹き切らんとね。そして、吹ききると同時に、表現はシンプルであること。言いたいことが良く判る。そう、シンプル・イズ・ベストなブロウなのだ。やれば出来るやん、ジョシュア。

それともう一つ、このアルバムを聴いて感心したのが、ジョン・スコフィールドのギター。どの曲でも、ジョンスコのギターは唄っている。その音色もマイルドでコクがあり、張りがあってツヤがある。

ジョンスコがこんなに「唄うような」ギターが弾けるとは知らなかった。なんせ、僕にとっては、かのマイルス・バンドのジョンスコの印象が強くて、こんなに柔軟で歌心溢れるギターが弾ける人とは想像もできなかった。ジョンスコ、すまん。

曲それぞれについては、どの曲も素晴らしいが、タイトル曲でもある『ラヴ・レター』のギター+ベース+ドラムスのトリオ演奏が秀逸の出来。ジョン・スコの繰り出すギターと、そのギターに呼応するかのような深いベース、そしてしなやかなドラム。いや〜ジャズってほんとに良いですね、って感じだ。ほんと、心からそう思う。

当然、リーダーのロイ・ヘインズのドラムは最高ですよ。加えて、アレンジ良し。音も良し。このアルバムを聴いて「ジャズっていいねえ」と言えない人は・・・。まあ、ジャズを好きになる資質が あるかどうか、それを見極める「踏み絵」みたいなアルバムと言えるだろう。

 
 

大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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