この盤でのMJQは初々しい
マンハッタン・ジャズ・クインテット(以降、MJQと略す)は、1970年代を席捲したフュージョン・ ブームが完全に行き詰まってしまい、ジャズ界全体が閉塞感に包まれ出した頃、フュージョンのアレンジャー&キーボード奏者として活躍していたデビッド・マシューズがリーダーとなり、1980年代の新しいメイン・ストリーム・ジャズを担うグループとして、1984年、日本人の企画により誕生しました。
「日本人の企画により」という部分が「ミソ」で、50年代〜60年代のハード・バップ、ファンキー・ジャズをベースとしながらも、1980年代の最新のジャズの要素も取り入れた、つまり「日本人好みの、当時最先端のメインストリーム・ジャズ」がコンセプトです。
「です」というのも、2013年になった今でも、このMJQはバリバリの現役バンドとして活躍しています。いやいや、まさか、30年近くもバンドが継続されるとは、デビュー当時は思いもしませんでした。
ファースト・アルバムのタイトルはあっさりと『Manhattan Jazz Quintet』(写真左)。1984年7月の録音。結成当時の5人のメンバーはというと、Lew Solloff (tp), George Young (ts), Daviid Matthews (p), Charnett Moffett (b), Steve Gadd (ds) の5人。当時、新人のベーシスト、チャーネット・モフェット以外、いずれも1970年代のフュージョン・ジャズの時代の荒波を泳ぎ切った、名うての「個性派のジャズメン達」である。
この「個性派のジャズメン達」という部分が曲者で、ここを上手く捉えないと、MJQを表面上だけで聴いてしまって、「人工的」だとか「商業主義」だとか「人間臭さが無い」とか評したりするのだ。
確かに1950年代のハード・バップの演奏に比べると、テクニックよろしく整然としていて隙が無いし、感情の起伏が上手くコントロールされていて、ミスが無い。しかし、なぜそれが「良く無い」となるのか。ジャズは日々進歩しているんだから、これだけの高度な技術を持ち合わせたバンドが出現しても不思議では無い。
まあ「作られた様な」という部分は判らないでもないですけどね(笑)。これは、ひとえにデビッド・マシューズの優れたアレンジが原因で、そういう印象を持ったりするんだろうと思う。
それほど、このMJQでのマシューズのアレンジは冴え渡っている。アレンジが冴え渡っている分、それを「作られた様に」感じるジャズ者の方もおられるのだと思う。クラシックの曲にこの傾向が多い。あまりに出来の良い曲に対して「あまりに作られた感じがする」と言われることが多いのと同じ理由だろう。
このファースト・アルバムでは、マシューズの秀逸なアレンジが「個性派のジャズメン達」を上手く活かしつつ、更なる輝きを与えている。エモーショナルなソロフのトランペット、コルトレーン的ではあるが、 コルトレーンより聴きやすく親しみやすいヤングのテナー、モフェットの初々しいベースも好感度良好。
とにかく、このアルバムでのMJQは初々しい。フュージョンが行き詰まってしまった後、ジャズ界全体を取り巻く閉塞感の中で、喜々として高らかにメインストリーム・ジャズの復権を宣言しているような躍動感溢れるアルバムだ。アルバム・ジャケットのデザインも良い。今でも良く聴きます。
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