ジャズ喫茶で流したい・43
Junior Mance & Joe Temperley『Monk』(写真左)。2003年7月のリリース。タイトル通りモンク曲集。ライブ音源である。どんなシチュエーションでのライブかな、と調べてみたら、なんと、2000年10月から11月にかけて、船上での「The Floating Jazz Festival」で行なったライヴの様子を捉えたライブ盤とのこと。それは珍しいなあ。
なかなか素晴らしい演奏が展開されるライブ盤で、ハード・バップなジャズの良いところを十分に感じることが出来るライブ盤である。ネットで検索して見ても、ほとんどヒットしないから、知る人ぞ知る「優れライブ盤」ということになる。ちなみにパーソネルは、Peter Washington (b), Junior Mance (p), Mickey Roker (ds), Joe Temperley (bs, b-cl) のカルテット構成。
ジョー・テンパリーって知らない名前で、ネットで調べてみたら、1929年生まれのスコットランド出身のバリトン・サックス&バス・クラリネット奏者とのこと。今年で84歳になる大ベテランである。1965年にニューヨークに活動拠点を移して、デューク・エリントン楽団にも所属していた由緒正しいジャズメンである。また、彼は Jazz at Lincoln Center Orchestraのオリジナル・メンバーでもある。ふ〜ん知らなかったなあ。
このジョー・テンパリーのバリサク&バスクラが実に素敵な響きである。バリサクのブラス輝く重低音とバスクラのちょっととぼけた感じの重低音が、セロニアス・モンク独特のフレーズに良く似合う。確かに、バリサク&バスクラでのモンクのフレーズを聴いたことは無かった。それだけでも、このライブ盤は貴重な体験だ。
加えて、ピーター・ワシントンも僕にとって馴染みの無いベーシストで、ネットで調べてみたら、1964年生まれのロス出身のベーシスト。米国西海岸中心に活動していたが、1986年、ニューヨークに移って、ジャズ・メッセンジャーズに参加。以降、ニューヨークを活動拠点として現在に至る。そうそう、彼の名前を思い出した。2008年の「The Blue Note 7」のベーシストでしたね。
このピーター・ワシントンの重低音ベースが、これまた魅力的。ブンブン、しなるように弾けるように響き渡る重低音は、ジャズの至福の音である。ミッキー・ローカーの味のあるドラムと相まって、素晴らしいリズム&ビートを提供してくれる。これぞハードバップという雰囲気のリズム&ビートは聴き応え十分。
ピアノのジュニア・マンスは、もうご紹介するまでも無いでしょう。ハードバップ時代から約60年。常にジャズ・ピアノ・シーンの中心で活躍してきたピアニストです。堅実でシンプルで破綻の無い、歌心とテクニックを併せ持った端正なピアノは、実に「粋」なピアノである。
マンスの端正なピアノで、癖のあるモンクの曲のフレーズを弾くと「どうなるんやろう」なんて思ったが、何てことは無い。テーマ部はモンク独特のフレーズを紡ぎ出し、インプロビゼーション部に入ると、モンク独特のコード進行に則って、マンスの流儀でアドリブ・フレーズが展開される堅実でシンプルで破綻の無い、歌心とテクニックを併せ持った端正なピアノでのセロニアス・モンク集。なかなか興味深い対比が楽しいですね。
日本のジャズ者の皆さんにはあまり馴染みのあるライブ盤では無いようですが、このライブ盤、実に良い内容です。知る人ぞ知る「優れライブ盤」。これぞ、ジャズ喫茶で流したい、ですね。
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