ピアノ・トリオの代表的名盤・34
このピアノ・トリオ盤は、ジャズ者初心者からベテランまで、老若男女、全ての人達にお勧めである。そのピアノ・トリオ盤とは、Kenny Drew Trio『By Request』(写真左)。
タイトルからして、ははん、と思われるジャズ者の方も多いだろう。確かに、このピアノ・トリオ盤は、当時のジャズ雑誌の権威「スイング・ジャーナル」で、ケニー・ドリュー・トリオで演奏して欲しいスタンダード曲は何、という読者からの人気投票を受けて、上位10曲を演奏して収録した、いわゆる「企画盤」。
もちろん選ばれている曲は超有名なスタンダードばかり。日本のレコード会社のジャズの企画盤は、その意気込みの割に凡庸なものが多い。企画は悪くはないんだが、それをプロデュースする、それをアレンジする、そして、ジャズ界の有名ミュージシャンを集めて、演奏させる。
と、あ〜ら不思議、内容イマイチの、演奏イマイチの、アレンジがイマイチの「なんでこ〜なるんや」的なへんてこりんな内容の企画盤が完成する。日本のレコード会社の企画盤にこの傾向が強い。
この『バイ・リクエスト』も最初はそう思った。スイング・ジャーナルのレビューの絶賛評論を読んでも信用出来ない。こういう企画盤って、レコード会社とジャズ雑誌は絶対に「つるんでいる」からな(笑)。でも、このケニー・ドリュー・トリオのパーソネルを見て考え直した。
そのパーソネルとは、Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Ed Thigpen (ds), Kenny Drew (p)。ちなみに、このアルバムの録音日は、1985年8月24&25日。日本のレコード会社の企画盤ではあるが、なんと録音地はコペンハーゲン。しかも、ケニー・ドリューがセルフ・プロデュース。この録音地とプロデュースが良かったのではないか。
素晴らしく良い内容のピアノ・トリオ演奏である。ケニー・ドリューのバップで黒く、そこはかとなくファンキーなピアノが、このアルバムでは端正に響く。スタンダード曲を演奏するのに、この端正さは実に良い塩梅である。テーマが良く判るし、インプロビゼーションの展開もタッチが明快で気持ち良い。
そして、ペデルセンの超弩級のベースが、このピアノ・トリオの花形。鋼質のブリブリ響くペデルセンのウォーキング・ベースとソロが凄い。ドリューのピアノを惹き立て、インプロビゼーションの底をしっかりと支えつつ、自分の盤になると、ブリンブリンと鋼質なベースを響かせる。野太いが繊細さも併せ持つ「男のベース」である。
そしてそして、エド・シグペンのドラムが良いんだな〜、これが。このアルバムでのシグペンのドラムは素晴らしいものがある。シグペンの名演のひとつに挙げたい。オスカー・ピーターソン・トリオで鍛えに鍛えられたエド・シグペン。タムタムやスネア、シンバル等々、ドラム・セットを構成するそれぞれが、実に良い音を出している。実に趣味の良い小粋なドラミング。
いやはや、こんな3人が、超有名なスタンダード曲を演奏するのだ。これがまあ素晴らしいのなんのって。超有名なスタンダード曲ばかりなので、ジャズ者ベテランとしては、なんだか気恥ずかしさが先に立ったりするんだが、そんなつまらないプライドは捨てなさい、と言いたい(笑)。
当然、ジャズ者初心者の方々には、絶対のお勧めピアノ・トリオ盤です。とにかく、ジャズ者初心者からベテランまで、老若男女、全ての人達に言いたい。この『By Request』の良さは「聴けば判る」。
大震災から2年。でも、決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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