30周年記念・10年振りの新作 『Somewhere』
キース・ジャレット、ジャック・ディジョネット、ゲイリー・ピーコックのトリオ。現代ピアノ・トリオの代表格、通称「キース・ジャレット・スタンダーズ・トリオ」が結成30周年とのこと。そうか、もうそんなになるのか。
キースの「スタンダーズ」の出現は、当時、素晴らしく新鮮だった。1983年のことである。当時、フュージョン・ブームが去り、ジャズ界は、メインストリーム・ジャズ復古の時代を迎えつつあった。その傍ら、マイルス・デイヴィスが長い隠遁生活から復活し、体調は万全ではないにせよ、ジャズの最先端を再び走りつつあった。
そんな時代に、ジャズ・スタンダードしか演奏しない、ちょっと風変わりなピアノ・トリオ。それも、あのジャズ・ピアノの奇才、キース・ジャレットが率いてのピアノ・トリオである。新鮮なアプローチが素晴らしい、リリカルでメロディアスなピアノ・トリオは、当時、類を見なかった。
そんなスタンダーズ30周年記念のアルバムが出た。Keith Jarrett Trio『Somewhere』(写真左)。キース率いるスタンダーズの最新作。今回もライブ音源。10年振りの新作。もう、キースには新しい何かは無い。でも、新譜が出ると結局手に入れて聴く。これって最早「習慣」である。
今回の作品は10年振りの新作。2003年にトリオ結成20周年を記念してリリースされた『アップ・フォー・イット』で2002年7月のフランス「ジュアン・レ・パン」におけるパフォーマンスが収録されて以来、トリオとしての作品は一切発表されなかった。ファンの間では「空白の10年間」と言われていた。
本作はまさに待望の新作。2009年7月11日、スイスのルチェルンにて行われた公演を収録した最新ライヴ音源。30年間、スタンダード曲ばかり演奏してきて、まだ演奏出来る曲があるなんて、本当にジャズ・スタンダードって奥が深い。
トリオの音は、徹頭徹尾、「スタンダーズ」の音である。ディジョネットのドラムの音、ピーコックのベースの音、キースのピアノの音。30年間、聴き慣れた音である。インプロビゼーションのアプローチは、いつもの「スタンダーズ」のアプローチ。もう、これは金太郎飴。変幻自在、硬軟自在ではあるが、自由度の高い展開は、徹頭徹尾「スタンダーズ」のもの。
この新作、幾度か繰り返して聴いたが、いつもの「スタンダーズ」の音がここにある。確かに、キースには新しい何かは無い。しかし、このライブ盤には、時間に時代に練りに練られた、柔軟度と自由度の高い、30年前から全く変わらない「スタンダーズ」の音がこしっかりと詰まっている。
しかし、である。キースの唸り声も、30年前から変わりなく録音されている(笑)。この唸り声さえなければ、「スタンダーズ」はもっとヘビロテになっていたのになあ〜。このキースの唸り声に聴き慣れるには時間がかかる。キースの「スタンダーズ」は素晴らしいピアノ・トリオではあるが、このキースの唸り声だけが「鬼門」である。
このキースの唸り声は、人それぞれ捉え方、感じ方があるんでしょうが、概ね、評判は良くはありませんな(笑)。ヘッドフォンで聴くには、さらに「勇気」がいります(笑)。
★大震災から2年2ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 梅雨時のそぼ降る雨の日に | トップページ | 1974年のジョージの佳作です。 »
コメント