ジャズの基本はハードバップ・『Not Yet』
ハードバップの芳しき香り。やっぱり、ジャズの基本はハードバップやなあ、とつくづく思う。ジャズの基本の全てが詰まっている演奏スタイルと言える。しかも、聴いていて判るし、判り易い。
ハードバップしか演奏しないバンドやミュージシャンというのも沢山いる。それほど、ハードバップは奥が深く、バリエーション豊かな演奏スタイルなんだろう。例えば、ハードバップ専門の老舗コンボに、Art Blakey & The Jazz Messengers がある。
アート・ブレイキーと言えば、1940年代から活躍していた伝説のジャズ・ドラマー。惜しくも1990年10月に亡くなっている。1919年の生まれだから71歳で亡くなったことになる。ちょっと早かったなあ。
彼の豪快なバス・タムのドラムロールは、ナイアガラの滝に例えて「ナイアガラ・ロール」と呼ばれた必殺技。グループサウンズ全体のバランスと、フロント楽器が演奏し易いようにメリハリを効かせたドラミングが特徴。しばしば共演者を鼓舞するドラミングが印象的で、そのドラミング・スタイルは、ハードバップ・ドラミングの範とされた。
そんな、アート・ブレイキーが主宰したハードバップ・コンボが、ジャズ・メッセンジャーズ。アート・ブレイキーがリーダーとなり、メンバー・チェンジを繰り返しながら、ブレイキーの晩年まで活動を続けた。ブレイキーは若手、新人の発掘に力を注いでおり、このジャズ・メッセンジャーズに迎え入れて、鍛えに鍛えた。ジャズ・メッセンジャーズ出身の人気・実力派ミュージシャンは数多い。
つまり、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズは、若手・新人の登竜門であり、ハードバップ道場みたいなコンボだった。そう、演奏するスタイルは一貫してハードバップ。しかも、当時、先進的であったモード演奏をいち早く取り入れるなど、時代時代で、ジャズ・メッセンジャーズに君臨した音楽監督役のミュージシャンの才能を遺憾なく発揮させた。
但し、アートの晩年は、体力の衰えが顕著になり、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの評価はまちまちであるのが残念である。まちまち、とは言え、どんなアルバムでも、水準レベルの演奏は維持しているところは立派。所謂、腐っても鯛である。
そんなアートの最晩年のアルバムの中で、良く聴くアルバムの一枚が、Art Blakey & The Jazz Messengers『Not Yet』(写真左)。1988年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Phillip Harper (tp), Robin Eubanks (tb), Javon Jackson (ts), Benny Green (p), Peter Washington (b), Art Blakey (ds)。
現代ジャズにおいての有名どころでは、トロンボーンのユーバンクス、ピアノのグリーンの名が見える。 この亡くなる2年前、やっぱり、ジャズ・メッセンジャーズは、若手・新人の登竜門であり、ハードバップ道場みたいなコンボだった。演奏スタイルは、徹頭徹尾ハードバップである。なんの捻りも無い、ストレートなハードバップ。
先にも書いた様に、アートの晩年のアルバムは評判が良くないものもあるんだが、これはなかなかの力作。1988年という、新伝承派の第2世代が頭角を現しつつある頃で、そんな新伝承派の思索的で知的でクールなハードバップが展開されている。そんな当時の流行の演奏内容に、なんの違和感も無く、ドラムで堅実にバッキングしつつ、フロントを鼓舞するアート・ブレイキーは見事。
ちょっぴりリー・モーガンを想起させるフィリップ・ハーパーのペット。ハンク・モブレイをそのままに、この時代に持ってきた様なジャボン・ジャクソンのテナー。徹底したファンクネスが芳しいベニー・グリーンのピアノ。重低音が心地良いピーター・ワシントンのベース。歌心満点、テクニック満点なロビンユーバンクスのボーン。凄い奴らがアートに煽られ、吹きまくる、弾きまくる。
これ、あまり話題にならないけど、良いハードバップ盤です。ジャズの基本はハードバップ。晩年のアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの快作です。
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