注目の大和撫子ジャズ・ピアノ
数少ないジャズ月刊誌「JAZZ JAPAN」を読んでいて、またまた注目の大和撫子ジャズ・ピアニストを思い出した。昨年の10月にメジャー・デビューしていたのは知っていたが、まだそのデビュー盤を聴いていなかった。
その注目の大和撫子ジャズ・ピアニストの名は「桑原あい」。1991年生まれとあるので、今年で弱冠22歳。最早20歳台って、自分の歳から考えると、しっかりと娘の年頃なので、とにかく可愛らしい、のひとこと。エレクトーンからピアノへの転身組。
タワレコ・オンラインのインタービュー記事を読むと、ジャズ・ピアノとの出会いと傾倒を以下の様に語っている。「小学校5年の時、エレクトーンで演奏するために、先生に『マッド・ハッター』を聴かせてもらって“ガーン!” ってなったチック・コリアさん、国際フォーラムで観て感動した上原ひろみさん、ミシェル・ペトルチアーニさんも、みんなピアニストですしね」。
さて、彼女のデビュー盤をやっと聴くことが出来た。ai kuwabara trio project『from here to there』(写真左)である。もともとは、2012年5月に販売開始した自主制作盤。その自主制作盤の内容が注目されて、eweからメジャーデビューと相成った。ジャケット・デザインを見れば、このCDがジャズのアルバムだとは思わないだろうな(笑)。
さて、その内容はと言えば、まず「上手い」。インタビューでも練習が好きだ、と豪語しているだけあって上手い。タッチやフレーズは決して破綻することは無く、高速パッセージも難なくこなす。強いアタックでは、ちょっとひ弱な部分が出るのは女子だから仕方が無い。
そして、彼女は好きなピアニストとして、チック・コリア、上原ひろみ、ミシェル・ペトルチアーニを挙げているが、彼女のピアノは、このお気に入りのジャズ・ピアニストの個性をコピって、演奏の中に散りばめた、つまりは、お気に入りのピアニストの「良いとこ取り」というか「個性の寄せ集め」の様な表現になっている。
そして、ところどころ、森田真奈美の様な「捻れフレーズ」が出てくるところもあって、彼女のお気に入りピアニストの「個性のショーケース」の様な雰囲気になっている。
う〜ん、気持ちは判らんでは無いがなあ。初リーダー作である。まずは自分の弾きたい様に弾く。確かにこれが大切なんだが、これだけ、先人の個性の良いとこ取りをすると、これは彼女のピアノの個性、というよりは、先人の有名ピアニストの個性を弾き分ける器用さ、ということになってしまう。ここはグッと一念発起、物真似では無い、自分ならではのピアノの個性を醸成して欲しい。
自作曲の曲作りもまずまず、テクニックは先にも言及した様に実に優秀。それだけに「器用貧乏」で終わって欲しくない。純ジャズ系のジャズ・ピアノではあるんだが、マイナー調に傾かず、どちらかと言えば、メジャー調に傾くフレーズは彼女独特のピアノの個性と言えるかもしれない。きっと彼女ならではの個性が埋もれているはず。そんな期待感を持たせるデビュー盤ではある。
JAZZ JAPANの記事のタイトルが「桑原あい 21歳にしてジャズの未来を切り拓くピアノの妖精」。可愛らしい風貌だからと、アイドル扱いして欲しくは無いなあ。ジャズの世界である。演奏スタイルの個性で勝負するか、アレンジ&コンポーズで勝負するか、純粋アートな音楽ジャンルとして、実力と個性で売り出して欲しい。可愛らしさ優先で売り出すと後で辛くなる。
でも、風貌が可愛らしいからって、このデビュー盤の内容が「可愛らしい」かと言えばそうではない。タッチも強く鋭い、意外と重厚な内容のメインストリーム・ジャズである。これは痛快。だからこそ、自分ならではのピアノの個性を醸成して欲しいのだ。この4月10日にはセカンド・リーダー作『THE SIXTH SENSE』がリリースされると聞く。その内容が今から楽しみだ。
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