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2013年3月16日 (土曜日)

境界線が曖昧な故の「成果」

ジャズと他のジャンルの音楽、ロックやワールドミュージックの音楽との融合で出来た、ジャズのスタイルの一つである「フュージョン・ジャズ」。米国や日本では、ロックはロック、ジャズはジャズで、それぞれ、しっかりと音楽ジャンルの垣根をハッキリさせて、発展したが、欧州ではその事情がちょっと異なる。

例えば、英国では、この「フュージョンのジャンル」は、米国のような、ジャズのジャンルでの発展形ではなく、ロックのジャンルの一つである「プログレッシブ・ロック」との「共有(シェア)」で発展した。つまり、ジャズのミュージシャンが突如としてプログレに走ったり、プログレのミュージシャンが、突如としてクロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズをやったりするのだ。

ジャズのミュージシャンが突如としてプログレに走った例としては、Affinityというバンドがそう。ボーカルのリンダ・ホイルが不在の時はオルガン・ジャズに勤しみ、リンダ・ホイルがカムバックした途端、プログレに走った。逆に、プログレのミュージシャンが、突如としてクロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズをやったりする例としては、キング・クリムゾンのドラマー、ビル・ブラッフォード(ソロでの活動)や、ジェネシスのドラマー、フィル・コリンズ(ブランドXへの参加)が挙げられる。

今日は、ビル・ブラッフォードのライブ盤を採り上げる。改めて、そのアルバムは、Bill Bruford『The Brufford Tapes』(写真左)。979年7月12日、カナダのFM曲の公開録音の模様を収録したもので、ブート音源のオフィシャル化。「Bruford」名義のアルバムとしては唯一のライブ音源になります。ちなみにパーソネルは、Bill Bruford (ds), Dave Stewart (key), Jeff Berlin (b), John Clark (g)。ドラムでリーダーのブラッフォード以外、英国のプログレ/フュージョン・シーンのミュージシャンなので、名前を見ても全く判らない。

ビル・ブラッフォードについては、5年ほど前、2008年3月29日のブログ(左をクリック)にて、このブログで1回だけ採り上げている。ブラッフォードは英国出身のドラマーで、1970年代、一世を風靡したプログレッシブ・ロックの人気バンド、イエス、キング・クリムゾンに在籍した。日本では、プログレッシブ・ロック界を代表するドラマーの一人として通っている。
 

The_bruford_tapes

 
しかし、ブラッフォードは、1974年、いきなりロバート・フィリップがキング・クリムゾン解散してしまった後、カンタベリー・ジャズロックの諸バンドや、プログレ・バンドのジェネシスのツアーメンバー等のセッション活動を経て、1978年にU.K.の結成に参加したが、アルバム1枚でU.K.を脱退、翌1979年に自身のバンドである「ブラッフォード」を結成した。

この自身のバンドである「ブラッフォード」が、ジャズのスタイルで言う「フュージョン・ジャズ」の音なのである。どう聴いても、プログレッシブ・ロックでは無い。出だしの「Hell's Bells」での、前奏のDave Stewartのシンセサイザーのリフと音を聴くと、キャッチャーでメロディアスなリフやフレーズが随所に散りばめられていて、ちょっとプログレ寄りの音作りなんですが、インプロビゼーションの展開に入ると、これは、リズム&ビートも含めて、もうフュージョン・ジャズ。

このライブ盤、もともとの音源がブート音源なので、音がちょっと荒いんですが、これはこれでライブ感が増幅されて、あまり気にはなりません。楽器の音の分離は良く、ブラッフォードの変拍子ドラミングが良く聴き取れて、なかなかのものです。他の楽器も良く聴き取れて、インプロビゼーションでの、それぞれの楽器担当のハイテクニックな様が良く判ります。

収録されたどの曲も、適度にテンションは高く、充実した内容です。リズム&ビートと演奏の展開から、その内容は、フュージョン・ジャズ、若しくは、ジャズロックと位置づけて良いかと思います。ほんと、英国のプログレ/フュージョン・シーンって、面白いですね。他にもいろいろあるんですが、それはまた後日、ご紹介していきたいと思います。

所変われば品変わる。国が変わればジャズも変わる。特に、英国や和蘭のプログレ/フュージョン・シーンって面白い。フュージョン・ジャズやジャズロックは、米国のような、ジャズのジャンルでの発展形ではなく、ロックのジャンルの一つである「プログレッシブ・ロック」との「共有(シェア)」で発展しているのだ。所謂、ロックのジャズの境界線が曖昧。そんな「曖昧」な故の音楽的成果が多々残されている。英国や和蘭のプログレ/フュージョン・シーンをもっと掘り下げてみたいと思っている。
 
 
 
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Never_giveup_4

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