カールトンの初アコギ盤
ギターには、大別して2形態、アコースティック・ギター(アコギ)とエレクトリック・ギター(エレギ)とがあるが、同じギターだから弾き方も同じと思われている向きもあるが、どうして、アコギとエレギでは弾き方が違う。
まず、弦の種類が全く異なるし、弦の柔らかさも違う。アコギはギター自身の「生音の鳴り」が全てであるが、エレギはアンプを通した「電気的に加工された鳴り」である。ネックの太さも違うし、まあ、アコピとエレピくらいに違うと考えて良いのではないか、と思う。
よって、エレギを専門に弾いているギタリストが、ちょいとアコギに持ち替えて、アコギを専門のエレギの様に、スラスラと弾けるのかといえば、そうでは無いだろう。ジャズ界でエレギとアコギの両方を遜色なく弾き分けるギタリストは少ない。
そんな、エレギとアコギの両方を遜色なく弾き分けるギタリストの一人がラリー・カールトン(Larry Carlton)。元々はこのギタリストは、セミアコの専門。Gibson ES-335が愛用機種で、その最高の弾き手として「Mr.335」と呼ばれる。
セミアコとは、セミ・アコーステック・ギターの略で、アコギの様に「生音の鳴り」を活かしつつ、エレギのアンプを通した「電気的に加工された鳴り」が特徴の、基本的にエレギの一種。
そんなエレギの専門であるラリー・カールトンが、アコギに挑戦したアルバムが『Alone/But Never Alone』(写真左)である。1985年のリリースになる。このアルバムこそが、ラリー初の、全曲アコギによるアルバムである。
これがまあ素晴らしい内容なんですね。一言で言うと「優しくて美しい」。アコギの響きを鳴りを最大限に活かして、とにかく「優しくて美しい」フレーズを連発します。エレギの時のファンキーな雰囲気は全く影を潜め、爽やかで透明感と切れ味のある音を引っさげて、全編、アコギを弾きまくります。
それまで、アコギのジャズの有名どころは、ナイロン弦だったんですが、このアルバムで、ラリー・カールトンが、主に使用しているアコギはスチール弦のアコギです。フォークやカントリーでは主役となり得るスチール弦のアコギなんですが、ジャズで活躍出来るとは思いませんでした。そういう意味でも、このカールトンの初アコギ盤は、当時、僕からすると「目から鱗が落ちる」でした。
スチールのアコギで、ここまで表現豊かに優しく美しく弾きこなせるなんて、いや〜感心することしきり、です。1985年のリリースなんで、アルバム全体の音作りが、ちょっと「デジタル臭い」のですが、それを凌駕する、カールトンのアコギの「優しくて美しい」音色がフレーズが素晴らしい。
ジャケット・デザインも秀逸で、僕はこの望遠鏡を覗く子供のイラストをあしらったジャケットが大好きです。タイトルの『Alone/But Never Alone』にピッタリな感じで、ジャケ買い御用達というところもこのアルバムの良い所です。1980年代のスムース・ジャズの名盤の一枚です。フュージョン者の方々にお勧めです。
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