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2013年2月22日 (金曜日)

必聴『ジャズ来るべきもの』

オーネット・コールマンの話題とくれば、この作品は外せない。Ornette Coleman『The Shape Of Jazz To Come』(写真左)。邦題は『ジャズ来るべきもの』。なかなか良く出来た邦題である。

この『ジャズ来るべきもの』は、ほとんどのジャズ入門本に載っている。オーネット・コールマンの代表作、フリー・ジャズの源、フリー・ジャズの聖典とされる。この『ジャズ来るべきもの』を聴けば、フリー・ジャズがなんたるかが判る、とまで言い切った評論もある。

まあ、これは極端な言い方で、この『ジャズ来るべきもの』を聴けば、フリー・ジャズがなんたるかが判る、なんてことは無い。そんなにジャズは単純なものでは無いし、甘いものでも無い(笑)。僕は、そもそもこのアルバムってフリー・ジャズなのか、と訝しがったりしているのだ。

このアルバムの録音は1959年5月22日。1959年と言えば、ハードバップ後期。マンネリを打破する為のモード奏法や、エンタテインメント性を押し出したファンキー・ジャズなどが流行りだした頃。しっかりとアレンジされ、しっかりと演奏のルーティンが決まっていたハードバップ全盛時代にあって、確かに、この『ジャズ来るべきもの』の登場は、理解不能な出来事だったに違いない。

よくよく聴いて見ると、そんなにフリーに吹きまくっている訳でも無いし、アブストラクトに構えている訳でも無い。どう聴いても、フリー・ジャズという風情では無い。基本的に、ハードバップのルーティンに則っているし、コード進行に則っているし、定型なリズム&ビートに則っている。しっかりとした取り決めに則った演奏であることには違いない。
 

The_shape_of_jazz_to_come

 
これのどこが「フリー・ジャズ」なんだ?ってやっぱり思ってしまう。アルバム全体を通して聴くと、出来る限り「自由」に演奏するように、メンバーが皆、振る舞っている。

ハードバップの様に、しっかりとアレンジされて無くても良い、ユニゾン&ハーモニーはキッチリと整然と合って無くても良い、リズム&ビートは多少ずれていても良い、コード進行から少々外れていても良い、決められたコード進行で無くても良い、既成の演奏ルティーンを守らなくても良い、シーツ・オブ・サウンドはコードをばらしたもので無く、適当でも良い。そんな感じで、皆、出来るだけ「自由」に演奏しようと心がけている。

この心がけが集まって、この摩訶不思議な雰囲気の演奏が出来上がっている。このアルバムでの「フリー・ジャズ」のフリーは、この出来るだけ「自由」に演奏しよう、既成の決め事に則らずに、自分の感覚、自分のテンポで演奏してみよう、という感じの「フリー」である。

ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as), Don Cherry (cor), Charlie Haden (b), Billy Higgins (ds)。この顔ぶれをみれば、いやはや、凄いメンバーですね。この4人でジャズの歴史的な録音がなされた訳です。この顔ぶれを見れば、自由な演奏をやる、っていうことに至極納得。

ジャズ入門本に必ず書かれている「フリー・ジャズの祖」という言葉に惑わされてはいけません。しっかりとメインストリーム・ジャズしていて美しい、そして意外と耳当たりの良い、硬派な即興演奏です。絵画の世界で言うと、シュールレアリスムの手前、「フォーヴィスム」若しくは「キュービズム」辺りでしょうか。

ジャズ者を自認するなら、やはりこの『ジャズ来るべきもの』は一度は聴かないといけませんね。現代のジャズの礎のひとつであることに疑いはありません。
 
 
 
 
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Never_giveup_4

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