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2013年2月 4日 (月曜日)

マイケルのテナーを愛でる 『City Scape』

2007年1月13日、1970年代以降にデビューしたテナー・サックス奏者の第一人者、マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)が亡くなった。満57歳での早すぎる逝去だった。

マイケル・ブレッカーのテナーは、コルトレーン譲りの圧倒的なテクニックと、ウィンドシンセサイザーを含め、それまでに無い独特で多彩な表現力が特徴。人気・実力共にNo.1のテナー・サックス奏者だった。実に惜しい人材を亡くした、と悲嘆に暮れた。

このマイケル・ブレッカーのリーダー作はそんなに多く無い。なんとリーダー作は、1987年の『Michael Brecker』。38歳の初リーダー作は、コルトレーンよりも遅咲きである。2007年に亡くなるまで、10枚のリーダー作を数えるに過ぎない。寡作のバーチュオーゾだった。

さて、このマイケル・ブレッカーのテナーを愛でるには、この彼のリーダー作の全てを聴き通すというのが一番(10枚のリーダー作はどれもが優れた出来である)ではあるが、手っ取り早く「これ一枚」で、マイケル・ブレッカーのテナーを心ゆくまで愛でることができる「お徳用の一枚」がある。

その一枚とは、Claus Ogerman & Michael Brecker『City Scape』(写真左)。ストリングス入りの企画盤。いわゆる「Michael Brecker With Strings」である。

1982年のリリース。ちなみにパーソネルは、Claus Ogerman (arr, cond), Michael Brecker (sax), Warren Bernhardt (key), John Tropea, Buzz Feiten (g), Marcus Miller, Eddie Gomez (b), Steve Gadd (ds), Paulinho da Costa (per)。メンバーとして申し分の無い顔ぶれである。
 

Michael_breaker_cityscape

 
ストリングス入りの企画盤でしょ、ストリングスに乗ってマイケルがテナーを吹きまくる、それだけでしょ、なんて言わないで下さいね(笑)。

この盤でのオガーマンのストリングスのアレンジは趣味が良く、マイケル・ブレッカーのサックスとの相性が抜群なのです。そして、他のミュージシャンとの絡みも実に良く、単なる「ストリングス入りの企画盤」のレベルを大きく上回った、素晴らしい出来の「ストリングス入りの企画盤」。

ストリングス入りの企画盤ではあるが、ジャジーなリズム&ビートを効かせたジャズでは無い。ジャジーなリズム&ビートは、ストリングスのアレンジとテナーの旋律を惹き立たせる様、抑制され制御される。ギターを含めたリズム・セクションが、実に抑制されたハイテクニックなバッキングを供給する。特にガッドが全編ブラシで、実に抑制されたストイックなドラミングを聴かせてくれます。

このアルバムは、ストリングスとリズム・セクションの「抑制の美」を前提に、フロントのマイケル・ブレッカーのテナーを全面に押し出した、マイケル・ブレッカーのテナーだけの、マイケル・ブレッカーのテナーを愛でるだけに存在するアルバムだと解釈しています。

テナー奏者がリーダーの良く似た雰囲気のアルバムに、ジョン・コルトレーンの『Ballads(バラード)』があるが、この『City Scape』は、マイケル・ブレッカーにとっての『Ballads(バラード)』の様なアルバムである。

飛び散る汗と煙、そして熱気、といったアグレッシブなジャズとは全く対極にある音世界ですが、これもジャズだと思います。ストリングスの流れの底に、しっかりとジャズのリズム&ビートが潜むように流れている、素晴らしく雰囲気のある「ストリングス入りの企画盤」です。マイケル・ブレッカーのテナーを愛でるのには欠かせないマストアイテムです。
 
 
 
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Never_giveup_4

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