ミルト・ジャクソンに駄作無し 『Vibrations』
ジャズのヴァイブ奏者は数少ない。逝去したなお第一人者として君臨するのは、やはり、ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)だろう。1999年10月に逝去しているので、ミルトが鬼籍に入ってから、早13年が経過したのであるが、ミルトの残した成果は時の流れに色褪せることは無い。
ミルトのヴァイブは大好きなので、時折、思い出したように彼のリーダー作を引っ張り出して来ては聴いている。ミルトはMJQを離れてプレイする場合は、とてもファンキーでポップになる。聴いていて楽しくなるような、ウキウキするような、ポップなアルバムが多い。
そんなポップなアルバムの中で、今日は、Milt Jackson『Vibrations』(写真左)を選んで「ながら聴き」。ビッグバンド様な響きが魅力の大編成のセッション2つと、通常よくあるクインテットの演奏にボーカルコーラスを加えたセッションと、1960年から1961年にかけて行われた3つのセッションをカップリングしている。正確に言うと、1960年2月23日、2月24日、1961年3月14日録音の寄せ集めになる。
アトランティック・レーベルのアルバムなので、パーソネルを眺めても、意外と知らないジャズメンが要所要所を担当していたりする。この寄せ集めた3つのセッションを通して、継続的にサポートしているのは、ピアノのトミー・フラナガンとドラムのコニー・ケイ。
そして、ベースには、大編成のセッションには、アルヴィン・ジャクソンが、クインテット編成のセッションには、ジョージ・デュヴィヴィエがそれぞれ担当している。とまあ、要のリズム・セクションには、ハードバップ時代からの旧知の手練を配しているところは、さすがミルト・ジャクソン、手抜かり無し、というところかな。
3つのセッションの寄せ集めではあるが、それなりに演奏の雰囲気は統一されている。つまりは、ミルト・ジャクソンのヴァイブの個性は、バックの編成やメンバー構成などに左右されることがない、一貫して「ファンキーでポップ」なところが、この統一感を強くバインドしているということだろう。
どの演奏も聴いていて楽しいし、リラックスして聴くことが出来る。上質のイージーリスニング・ジャズと言えないことも無い。タイトル曲は混成コーラスとの共演であり、後の時代に流行する「ソウル・ジャズ」の走りの様な響きが魅力的。ミルトは常に「時代の好み」というものを意識していたのだろう。クラブ・シーンでも人気のトラックというもの頷ける。
アトランティック・レーベルに残したミルトのソロ・リーダー作は結構な数があるのだが、なぜかマイナーであまり話題に上ることが無い。が、どのアルバムも聴いて見ると、なかなかの内容、なかなかの水準を維持した佳作揃いなのだ。う〜ん「ミルト・ジャクソンに駄作無し」ですね〜。
ちなみに、このアルバム・ジャケット、ちょっと変で趣味の悪そうなデザインなのですが、これって、この時期にアトランティック・レーベルが何枚かやった、写真のから、イズラエルという画家が抽象画を描くという趣向なのです。
他にジョン・コルトレーン、ソニー・スティット、チャール・ミンガスがこの「ちょっと変で趣味の悪そうなデザイン」の被害に遭っています(笑)。
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