ジャズ界の「不思議ちゃん」『Odyssey of Iska』
よくよく、彼のキャリアを振り返って見れば、ちょっとした「不思議ちゃん」では無いでしょうか。その彼とは「ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)」。
あるジャズ雑誌の記事で、元マイルス・バンドの盟友ハービー・ハンコックが、「ウェインは宇宙と交信できると言っている。時々会話もしているみたいだ」といったようなことを語っていました。確かに、ウェイン自身のインタビュー記事でも「俺は宇宙と交信して、その交信を介して音楽を演奏している」なんてことを言っていた。
確かに、ウェインの「宇宙との交信」については、何となく判る様な気がする。ウェインがリーダーとして演奏するアルバムの中で、その内容が「宇宙的な浮遊感と自然の音を題材にした様な」フリーキーな演奏をメインにしたアルバムが幾枚かある。
その一枚が『Odyssey of Iska』(写真左)。1970年8月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Cecil McBee, Ron Carter (b), Al Mouzon, Billy Hart (ds), Gene Bertoncini (g), Frank Cuomo (per), Wayne Shorter (ts,ss), Dave Friedman (vib,marimba)。
収録された曲のタイトルを並べてみると、「宇宙的な浮遊感と自然の音を題材にした様な」という雰囲気が「もろ判り」である。ジャズのアルバムに収録した曲のタイトルとして、これだけでもウェインは「不思議ちゃん」である。
1. Wind
2. Storm
3. Calm
4. De Pois Do Amour O Vazio
5. Joy
宇宙に繋がる「風や大地、そして地球」を題材にしたフリー・ジャズ、といった内容です。1970年と言えば、コルトレーン亡き後、フリー・ジャズがジャズのフォーマットとして定着した時代ですが、さすが宇宙と交信するミュージシャンであるウェイン、周りと同じアプローチにフリー・ジャズは絶対にしません(笑)。
この宇宙に繋がる「風や大地、そして地球」を題材にしたフリー・ジャズというのが、ウェインの考えるフリー・ジャズなんですね。この宇宙に繋がるフリー・ジャズについては、後の時代、フォロワーはいません。これはもうウェイン・ショーターの専売特許です。
ウェザー・リポートの音楽性に繋がるなんて評価もありますが、とんでも無い。このアルバムでのウェインのフリー・ジャズは完全に孤立しています。孤高のフリー・ジャズ。ウェインの音楽キャリアの中でも、他の演奏内容と一切関連の無い、ウェインの中でも独立した唯一無二な音世界。
4曲目の「De Pois Do Amor, O Vazio」(恋の終わりは空しい)は、本作中唯一のカヴァー曲。ボサノバ調の柔軟な曲で、リズム&ビートの作り方、演奏の展開、適度なテンション。完成度は高い。
この曲があるからこそ、他の宇宙に繋がる「風や大地、そして地球」を題材にしたフリー・ジャズが映える。逆に、宇宙に繋がる「風や大地、そして地球」を題材にしたフリー・ジャズがあるからこそ、この「De Pois Do Amor, O Vazio」のボサノバが映える。
これがウェインの考えるフリー・ジャズである。宇宙との交信の成果である。このフリー・ジャズは唯一無二。ウェインにしか為し得ないフリー・ジャズ。しかし内容の難易度は高い。ジャズ者上級者向け。しかし、ウェインを理解するには避けて通れない。
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