続・チェンバロを使ったジャズ
ジャズでチェンバロを使った演奏として、昨日、Junior Mance『Harlem Lullaby』をご紹介したが、僕が、生まれて初めて、チェンバロってジャズに使われることがあるんだ、って思ったんが、このアルバムを聴いた時である。今から36年前、19歳の頃。大学に入って、ジャズを聴き始めた、ジャズ者初心者駆け出しの頃である。
The Modern Jazz Quartet『Blues on Bach』(写真左)。1974年に一旦解散する直前、1973年リリースの企画盤&実験作。「ブルース・オン・バッハ」というが、音楽の父、バッハの名曲をジャズとしてブルース化している訳じゃない。収録曲を眺めて見て面白いのは、奇数番目の曲はルイスがハープシコードを用いてバッハの曲を、偶数曲目はBACH(B)のコードネームを持つブルース演奏が繰り広げられる。
この「奇数番目の曲はルイスがチェンバロを用いてバッハの曲を演奏した」とされる、このアルバムの冒頭1曲目「Regret?」を初めて聴いた時の衝撃と言ったら・・・(笑)。まず、何故、ジャズの演奏においてチェンバロが使用されているのかが理解出来なかった。チェンバロは自ら弾いたことがあるんだが、あんなに繊細で微妙なタッチが必要とされる楽器を僕は知らない。とにかく繊細で、弾くに神経を使う。これってジャズには絶対に向かないのではないのかと・・・。
まあ、クラシック趣味のジョン・ルイスがバッハの曲をジャズのフォーマットで演奏するのである。演奏曲の味付けに、効果としてチェンバロを使用しても不思議では無い。
確かに、このアルバムでのチェンバロの使い方は、チェンバロでジャズを本格的にやろうとは思っていない。あくまで、「奇数番目の曲はルイスがチェンバロを用いてバッハの曲を演奏した」部分で、効果として、味付けとして、チェンバロを使用したまでのこと。このアルバムを最後まで聴けば、それが直ぐに判る。
面白いのはルイスがチェンバロを用いて、ジャズのフォーマットをベースにバッハの曲を演奏したものと、ブルースのタイトルが、「B♭・A・C・H」と語呂合わせしてならべたブルースな演奏とが素晴らしい対比を成している。これって「目から鱗」である。バロックとブルースの対比。バロック好きな、室内音楽的趣向が強いジョン・ルイスの面目躍如である。
特筆すべきはミルトとヴァイブ。「B♭・A・C・H」と語呂合わせしてならべたブルースでの、しっとりとした抑制の効いたブルージーなフレーズを叩き出すところは「十八番」と言えば「十八番」なので、素晴らしいのは当たり前として、ルイスがチェンバロを用いてバッハの曲を演奏した」部分での、そこはかとなく、底に趣味の良いファンクネスを漂わせながら、バロックなフレーズを叩き出すミルトの演奏家としての能力には感服する。
チェンバロを使ったジャズ、と言われて真っ先に思い出すのが、ジャズ者初心者駆け出しの頃に聴いた『Blues on Bach』。アルバム冒頭の「Regret?」の前奏のチェンバロの音。ルイスはあくまでバロックよろしくチェンバロを弾き続けるが、ミルト以下のバックが素晴らしくジャジーなブルースで応酬する。するとあらまあ不思議。バロックとブルースが融合して、これまた摩訶不思議な、それまでに聴いたことの無い、ジャジーな演奏が展開されるのだ。
今日のジャズのお話しはちょっと硬くなりました。でも、このThe Modern Jazz Quartet『Blues on Bach』は、企画盤として実験盤として優れたアルバムだと思います。演奏レベルも非常に高く、バロックとブルースが融合して、これまた摩訶不思議な、それまでに聴いたことの無い、ジャジーな演奏を生み出していることが、まことにジャズ職人風で良いですね。
これもジャズです。このアルバムでのチェンバロは、効果として、味付けとしてのチェンバロを使用に留めたジところが素晴らしい判断で、ジャズとしてのブルースの演奏を際立たせる、ジョン・ルイスのアレンジメントの才能が突出した、アレンジメントとアルバム企画の勝利の様なアルバムです。僕はこのアルバムはジャズ者初心者の頃からの愛聴盤の一枚です。
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