安心のデュオ、安心の一枚
今となっては、もう唯一無二の存在である。もうこの二人しかいないだろう。ピアノとヴァイブのデュオ。チック・コリアとゲイリー・バートン。今年の3月に通算7作目のデュオ盤をリリース。Chick Corea & Gary Burton『Hot House』(写真左)である。
この二人のデュオにはちょっと飽きが来ている、なんて向きもあるが、なんて贅沢な・・・(笑)。しかし、この二人が1972年に発表した初の共演アルバム『Crystal Silence』から順を追って聴き進めると、この二人のデュオ演奏は着実に進化していることが良く判る。僕にとっては「飽きが来る」なんてとんでもないことです。
この最新作、前作よりもピアノとヴァイブの音の分離と音の絡みが具合が進化している。着実に上手くなっている、なんて表現は失礼とは思うが、かなり高度なレベルで着実に上手くなっている。破綻の無いスピード感溢れるインプロビゼーションにも磨きがかかって、もうこれは「巧みの極み」。
相性が良いんでしょうね。ゲイリー・バートン曰く「しばらく一緒にプレイしていなかった時でも、10分もすればかつてのフィーリングを思い出せるんだよね。2ブロック後に、チックがどう展開しようとしているのかが判るんだ。きっと彼もそうだと思うよ。僕らがこれだけ長く一緒にプレイできるのは、そんな自然な反応がとれるからなんだ」。なるほど、やっぱりね。
初の共演アルバム『Crystal Silence』の頃から比べると、このデュオ演奏、確実にジャジーになっている。スイング感が強くなっているのが良く判る。冒頭の「Can’t We Be Friends」は、Art Tatum の作品なんだが、これがまあ、とってもスインギー。ファンクネスには全く無縁なんだが、実にリリカルでクリスタルなスイング感が抜群。
続く「Eleanor Rigby」はLennon&McCartneyの超有名曲のカバーなんだが、メロウでマイナー調のテンポの良い曲で、甘いアレンジを施したり、テンポを落としたりすると、どうしようも無いカバー演奏になってしまう可能性のある、アレンジが非常に難しい曲。
しかし、このチック&バートンの二人は「違いの判る二人」とでも言おうか、テンション溢れるアップ・テンポなナンバーに仕上げていて、なかなか秀逸なカバー演奏になっている。
そう言えば、このチック&バートンの最新作、初めてスタンダード曲に挑戦しているんですね。かなりマニアックな選曲ですが、どの曲もスタンダードと呼べる曲ばかりがズラリ。しかし、こうやって改めて聴いてみると、チック&バートンって、アレンジが秀逸ですね。確かに、デュオ演奏が「がたつく」ので、アレンジがしっかりしていないと駄目ですね。
初の共演アルバム『Crystal Silence』のリリースが1972年ということは、この今年リリースの通算7作目の『Hot House』で40年。40年も続けてきたデュオ・アルバム・シリーズの最新作は、スタンダード曲に初挑戦した、更に進化したピアノとヴァイブのデュオ演奏を堪能できます。
この二人のデュオにはちょっと飽きが来ている、なんて向きもありますが、僕にとっては「飽きが来る」なんてとんでもないことです。
僕がこのチック&バートンの『Crystal Silence』に出会ったのが1978年。ジャズに足を踏み入れる切っ掛けとなった一枚でした。僕は34年間ずっと、この二人のデュオのファンです。決して飽きが来ることはありません(笑)。
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