誠実な欧州ハードバップ・ジャズ
「時流に乗る」と言えば、昨日ご紹介したチャールズ・ロイドとはケースが異なるが、このバンドも、当時「時流に乗って」受けに受けた。このバンドも1960年代後半〜1970年代前半にかけて「時流に乗った」。
Phil Woods with European Rythm Machineというグループがあった。Phil Woodと言えば、ハードバップ時代からのアルト・サックスの雄。このレコードは、そのフィル・ウッズが36才の時に欧州はパリに移住、「European Rythm Machine」と命名した現地の優秀なリズムセクションと出会い、パリのスタジオで録音されたもの。
そのアルバムタイトルは『Alive And Well In Paris』(写真左)。1968年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Phil Woods (as), George Gruntz (p), Henri Texier (b), Daniel Humair (ds)。フィル・ウッズをフロントに据えたカルテット構成である。
1960年代後半、米国ではビートルズの上陸が切っ掛けとなって、ロックがポップスの主流となり、ジャズはポップスのメインから外れ、マイナーな音楽ジャンルへと転落していった。当然、日本でもそういうジャズの凋落現象が明らかになった訳なんだが、そんな時に、彗星の如く現れた、硬派な純ジャズ・バンドが、このPhil Woods with European Rythm Machineだったという訳。
僕は、リアルタイムに体験した訳では無いのだが、リアルタイムに体験したジャズ者の先輩に話を聞くと、1970年前後、ジャズ者の間では、このPhil Woods with European Rythm Machineは圧倒的な人気を誇っていたそうだ。
確かに、このアルバム『Alive And Well In Paris』を聴くと、その大人気だったということもなんとなく判る。内容的には、徹頭徹尾、大まじめで誠実な欧州ハードバップ・ジャズ。リーダーのフィル・ウッズも朗々とアグレッシブにアルトを吹き上げている。その音は実に艶やかでブリリアント。これぞ「アルト・サックス」、というブラスな響きは魅力十分。
フィル・ウッズは白人。ビ・バップの元祖、チャリー・パーカーの影響を強く受け、その後継者の一人としてそのスタイルを継承〜発展させてきた。このアルバムの演奏は、ファンクネスを限りなく押さえ、禁欲的でアーティスティックな響きが特徴の、実に硬派なヨーロピアン・ハードバップな演奏。時にアブストラクトに、時にフリー・ジャズ的にブレイクするところが、これまた、硬派なジャズ者の方々に受けに受ける。
その実に硬派なヨーロピアン・ハードバップな演奏は「Stolen Moments」を聴けば良く判る。凛としてテンション高く、禁欲的でアーティスティックな響きが実に「硬派」だ。バックのリズム・セクション(マシーン)も、とても硬派なリズム&ビートで、フロントのウッズのアルトを盛り立てる。
高速で電光石火な展開が魅力の「Freedom Jazz Dance」も、その捻れたフレーズが、ヨーロピアン・ハードバップっぽくて実に良い。整然と統制が取れた、全く破綻の無いリズム・セクションが捻れフレーズをガッチリとサポートする。硬派なヨーロピアン・ハードバップの真骨頂である。
そして、冒頭の「And When We Are Youn(若かりし日)」は「Dedicated To Bob Kennedy」という副題がついている。この「Bob Kennedy」とは、合衆国大統領J・F・ケネディの弟、上議員議員だったロバート・ケネディのことである。
そのロバート・ケネディと親交のあったウッズが、この年の6月、凶弾に倒れた彼の死を悼み(僕も小学校4年生の時にリアルタイムで経験した)、二人の青春の思い出を曲にしたもの。泣きのウッズのアルトが感動的である。
コルトレーンのフリージャズに疲れ、大衆音楽として台頭してきたロックには乗れず、とは言え、アーティスティックで創造的な音楽とはジャズしかない、と感じ続けていた硬派なジャズ者の方々には、このPhil Woods with European Rythm Machineは、福音だったに違いない。
それだけの「内容と響き」がこのアルバムには詰まっている。ちょっとトータルの収録時間が短いの玉に瑕だとは思うんですが・・・(笑)。
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