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2012年10月21日 (日曜日)

ギリ英国ロックなセカンド盤

1970年代ロックの究極の目標は「売れること」だったのだろうか。英国ロックの世界では「米国で売れること」だったのだろうか。1970年代に入り、半ばに差し掛かる頃、英国ロックの主要なグループやソロ・ミュージシャンは、こぞって米国を目指した。

米国で売れること、それが究極の目標かの如く、英国ロックの独特の個性である「くすんだ音、夕暮れ時の夕日の輝きの様なブルージーな音の感覚に、音が濡れている、ウェットな感覚」をかなぐり捨てて、米国マーケットでうける、と信じていたふしがある、乾いて判り易く単純なビートにのった判り易いキャッチャーなフレーズの積み重ねを無理矢理身につけようとした。

音楽とは、そのミュージシャンの心身から生まれ出でるものであって、頭の中で創り出すものでは無い。無理矢理に表現しようとしても、心身がついていかない。それが音楽というものだ。無理をしても、いわんや売れようとして、そのスタンスや個性をねじ曲げてみても、決して受け入れられることが無いのが、音楽の厳しいところ。

このバッド・カンパニー(略して「バドカン」)という、英国ロック生粋の最後のバンドと言って良い「ブリティッシュ・ロック」なバンドだって、先の例に漏れず、何故か米国マーケットを目指した。そして、英国ロックの肝の部分を置き去りにして、普通の国籍不明な米国ロック・バンドと相成って迷走していく。

そんな「バドカン」のデビュー・アルバムの余勢を駆って作成されたセカンド・アルバム『Straight Shooter』(写真左)。1975年4月のリリースになる。シンプルで重厚なファースト・アルバムのジャケット・デザインに比べて、なんだか良くわからない、このセカンド・アルバムのジャケットは、当時、僕の中では大変不評だった。
 

Straight_shooter

 
ファースト・アルバムでは米国指向の雰囲気の中、そこはかとなく湿っぽくて曇った様な、ブリティッシュ・ロック特有の雰囲気が漂っているところが魅力だったが、このセカンド・アルバムでは、そのブリティッシュ・ロック特有の雰囲気はすっかり払拭されてアメリカン・ナイズされた。

一言で言うと「演奏が巧い大人のアメリカン・ハード・ロック」って感じかな。このアメリカン・ナイズされたアルバム全体の雰囲気が受け入れられるか否かで、このアルバムの評価は変わる。

次のサード・アルバムは、完全にアメリカン・ハード・ロックになって、個性らしい個性も薄まって、元英国出身のバンドだなんて、ほとんど判らなくなることを考えると、バッド・カンパニーってバンド、このセカンド・アルバムまでが、英国ロックとしてギリギリかなあ。

まあ、アメリカン・ナイズされたとは言え、演奏全体の雰囲気は、まだまだ十分に重心が低く、しかも、演奏テクニックは申し分無い。この「重心の低い」部分が、ブリティッシュ・ロックらしい最後の部分だろう。そんなバックに支えられて、ポール・ロジャースが気持ちよく唄い込んでいく。

もともと、ポール・ロジャースって、歌が巧いんだが、このアルバムは特に巧い。ポール・ロジャースの歌と巧みなバックで、一気に聴かせてしまう。でも、一気に聴いた後、印象に残る楽曲が少ないのが、このアルバムの弱点。

極端に言い切ってしまうと、このアルバムは、ポール・ロジャースの歌声を愛でるアルバムであり、バッド・カンパニーの個性が確認できる最後のアルバムである。

 
 

大震災から1年半が過ぎた。決して忘れない。常に関与し続ける。

がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力しよう。 

Never_giveup_4

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