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2012年10月29日 (月曜日)

フラワー・ムーヴメントに乗る

1960年代後半のこの人のリーダー作を聴くと、「時流に乗る」とか「機を見て敏なる」とかいう言葉を思い出す。1960年代後半、フラワー・ムーヴメントにしっかりと乗ったCharles Lloyd(チャールズ・ロイド)。彼の「流行に乗る」戦略はそれはそれは巧みなものだった。

ロイド自身、テナー奏者である。1960年代のジャズの牽引者と言えば「コルトレーン」。特に、1960年代中盤から後半、逝去するまで、観念的で宗教的なフリー・ジャズ的演奏は、フラワー・ムーヴメントを牽引するヒッピーを中心として大いに受けた。観念的で幻想的なフリーキーなテナーの嘶きは、ドラッグでトリップする時のBGMにぴったりだったとか・・・。

そして、コルトレーンの限りなくフリーに近いが、伝統の域に軸足を残したモーダルな演奏は、これまたアーティスティックで、ヒッピーと並んでフラワー・ムーヴメントの中心だった当時の大学生達に大いに受けた。

ここに『Journey Within』(写真左)というアルバムがある。ロイドが、1967年1月27日、サンフランシスコのロックの殿堂『フィルモア』で残した熱狂のライブ盤である。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts,fl), Keith Jarrett (p), Ron McClure (b), Jack DeJohnette (ds)。ベースは何故かCecil McBeeではない。

当時ロックでは「先進的トレンド」だったサイケデリックな音。そして、ラブ・アンド・ピースなどの風俗をジャズに取り入れたロイド・カルテットである。サイケデリックな音は、フリー・ジャズな演奏に置き換え、電気楽器の使用はないがロックに通じるモーダルなインストはモーダルな演奏で代替する。

今の耳で聴き返すと、この頃のロイド・カルテットは、当時のサイケデリック・ロックの要素をジャズの語法に置き換えた感じが強い。「時流に乗る」とか「機を見て敏なる」という面で実に巧みである。
 

Journey_within

ロイドのテナーとフルートは、聴き易く判り易い「コルトレーン」という表現がピッタリだと思う。決して、オリジナリティー溢れるとは言い難い、コルトレーンの「判り易いレプリカ」の様なブロウが個性と言えば個性。

とにかく、フリーキーに吹いても、モーダルに吹いても、判り易いテナーとフルート。この判り易い、コルトレーンの様なテナーとフルートをどう評価するかで、ロイドに対する評価も大きく変わるのだろう。

そんなロイドのバックで、ピアノのキース・ジャレットとドラムのジャック・デ・ジョネットは、勝手に好きなように、モーダルなリズムセクションの、様々なアプローチを演奏してみせる。とにかく、やりたい放題し放題である(笑)。

フロントではロイドが、聴き易く判り易い「コルトレーン」で吹きまくっているバックで、このリズム・セクションの二人は、リーダーのロイドの演奏にお構いなく、勝手に好きなように、モーダルなリズムセクションの、様々なアプローチを演奏しまくる。時に、キースなどはフリーに走ってピアノを完全フリー・ジャズに弾きまくる。

これはこれで良かったのだろう。リーダーのロイドの演奏にお構いなく、勝手に好きなように、モーダルなリズムセクションの、様々なアプローチを演奏する、ちょっとアーティスティックで複雑なパフォーマンスが、ロイドのコルトレーンの「判り易いレプリカ」の様なブロウを更に「判り易く」惹き立たせているのだから面白い。

このライブ盤の内容は、1960年代後半、フラワー・ムーヴメントの時代ならではのコンテンポラリー・ジャズな音である。ジャズがロックの様に当時の時流、流行に乗って、受けまくり売りまくる。商売としてのジャズのアプローチ。そう、これもジャズである。
 
 
 
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Never_giveup_4

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