ブラッド・メルドーの攻略法・2
そのジャズ・ピアニストの個性を感じるには、当然、ジャズは即興なんだから、ライブが良い。加えて、他のピアニストと比較するには、スタンダードを題材とした演奏が良い。
Brad Mehldau『The Art of the Trio, Vol. 2 - Live At the Village Vanguard』(写真左)。ブラッド・メルドーの個性を感じるにピッタリのアルバムである。
このライブ盤は、1997年7月と8月の録音。ニューヨークは、ライブハウスの老舗、ビレッジ・バンガードでのライブ録音になる。ちなみにパーソネルは、
Brad Mehldau (p), Larry Grendier (b), Jorge Rossy (ds)。鉄壁のトリオである。
収録された曲は、メルドーの自作曲は一曲も無い。コール・ポーター、セロニアス・モンクといったジャズ・スタンダード名曲がズラリと並ぶ。この多くのジャズ・ピアニストが挑戦してきたジャズ・スタンダードの名曲をメルドーがどう弾きこなすか、という一点にこのアルバムの興味は集約される。
ブラッド・メルドーは非常に面白い個性をしている。ジャズの歴史の中で、現在までの優秀な「スタイリスト」と呼ばれる、自らの個性を確立したジャズ・ピアニストの個性を集約した様な「個性」をしている。
ある部分はビ・バップであり、ある部分はモードであり、ある部分はフリー。そして、ある部分はセロニアス・モンクであり、ある部分はビル・エバンスであり、ある部分はキース・ジャレットであり、ある部分はチック・コリアだったりする。マッコイ・タイナーの「シーツ・オブ・サウンド」的な奏法も披露するし、レニー・トリスターノの様な「クール奏法」もちらりと顔を出す。
つまり、ブラッド・メルドーのピアノの個性は、それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性のショーケース的なところ。
しかし、ブラッド・メルドーの非凡なところは、その「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」が単なる物真似になっていないところ。そして、個性のごった煮的雰囲気なんだが、演奏のトーンがバラバラにならずに「一貫性」を保っている。
ブラッド・メルドーのピアノは、「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」を自らのものにして、自らの個性を反映し、一貫性を保った、独特の弾き回しになっているのだ。これが素晴らしい。
だからこそ、ブラッド・メルドーは、他の現代のジャズ・ピアニストから注目され、目標にされる。所謂「ミュージシャンズ・ミュージシャン」である所以である。
ピアノ・トリオとしての展開は、ピアノ、ドラム、ベースとそれぞれが独立性を保った自由度の高いインプロビゼーション中心の展開。アプローチの基本は、キース・ジャレットのスタンダーズや、スコット・ラファロとのビル・エバンス・トリオと同じ、というか、スタンダーズやビル・エバンス3に比べて、インプロビゼーションの自由度の高い展開が「クール」。さすが、現代を代表するピアノ・トリオの一つである。
ブラッド・メルドーのピアノの個性を確認するに最適な一枚だと思います。ビレッジ・バンガードのライブの雰囲気も良く、聴いていて、なかなかに心地良さを感じることが出来ます。良いライブ盤です。
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