ビッグバンド・ジャズは楽し・18 『Ron Carter's Great Big Band』
約1ヶ月ぶりの「ビッグバンド・ジャズは楽し」の特集。3日前辺りから、めっきり涼しくなった。涼しくなってきたら、てきめん、ビッグバンドが聴くのが楽しくなる。
今日のビッグバンド・ジャズは『Ron Carter's Great Big Band』(写真)。2010年6月の録音。ロン・カーターの音楽キャリアの中で初めての、待望のビッグバンド・ジャズの録音だったと聞く。
ビッグバンド・ジャズの楽しみは、ビッグバンド・ジャズとしてのアレンジメントとコンポーズとプロデュース。しかし、このロン・カーターの初のビッグバンド盤は、アレンジャー兼ミュージック・ディレクターであるロバート・M・フリードマンに委ねられている。な〜んだ、ロン・カーター自身が、自身のビッグバンドのアレンジャー兼ミュージック・ディレクターを担当している訳じゃあ無いのか。
じゃあ、ロン・カーターとして、自らのビッグバンドを率いるチャンスが初めて巡ってきたとして、何が楽しかったのか、と思ってしまうし、聴く方としても、何を楽しみにして、この盤を聴いたら良いのか。ちょっと戸惑いを感じながらのアルバムのリスニングである。
収録された曲は、なかなかユニーク。ビッグバンド御用達という曲は多々あるが、ロン・カーターがリーダーということを考慮してか、ハードバップの名曲のビッグバンド・アレンジがずらりと並ぶ。
例えば、ガレスピーの「Con Alma」、マリガンの「Line for Lyons」、ショーターの「Footprints」、ジョン・ルイスの「The Golden Striker」など、ビッグバンド・ジャズのアレンジで、そうそう聴ける楽曲では無い。
さて、アルバム全体の雰囲気は、と言えば・・・。一言で言うと「安全運転」。ビッグバンドのメンバーもテクニックの優秀なメンバーをずらり集めている様で、ビッグバンドの演奏は素晴らしく出来が良い。破綻は全く無し、オーバードライブすることも無く、スローなバラードで横滑りすることも全く無い。
アレンジメントも普通の優秀なビッグバンドの「良きアレンジ」を集めて、その良いとこ取りをしたような、とにかく、絵に描いた様な端正で優等生的なアレンジメントで、とにかく聴いていて破綻が無い。変な癖も無い。個性的な響きも無い。この辺が、ビッグバンドを愛好するジャズ者の方々から、どう感じるかが興味のあるところ。
僕にとっては、何かしながらの「ながらジャズ」としては良いが、この「安全運転」で、絵に描いた様な端正で優等生的なビッグバンドは、どうも心底楽しめない。あまりに優等生的な、個性に乏しいビッグバンドなので、面白味に欠けるというか、どのポイントに絞って聴き耳を立てたらよいのやら、迷ってしまうなあ。
しかし、ビッグバンド入門用としては最適な内容でしょう。癖の無いところ、これがビッグバンドです、という様な優等生的なところが、ビッグバンドを初めて聴くジャズ者の方々には、結構良いのではないか、と思います。聴く耳に音が優しい、録音の良いところもグッド。
ビッグバンド・ジャズの楽しみは、ビッグバンド・ジャズとしてのアレンジメントとコンポーズとプロデュース。このポイントを全て、他人に任せてしまった、ロン・カーターがリーダーのビッグバンドって、どうにも楽しみポイントが見いだせない。
このアルバムを聴いて改めて思った。やっぱり、ビッグバンド・ジャズの楽しみは、ビッグバンド・ジャズとしてのアレンジメントとコンポーズとプロデュースなんだなあ、と。それは決して他人に任せてはいけないんだなあ、と・・・。
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