よくぞリリースしてくれました
いきなり、唐突に発売されたライブ音源。1992年10月28日東京でのライブを収録したもの。あの伝説のフュージョン・バンド「Stuff(スタッフ)」のキーボード担当、Richard Tee(リチャード・ティー)の『Real Time Live In Concert 1992 - In Memory Of Richard Tee』(写真左)。
このライブ音源とはいかなるものか。ネットで調べると、ティーのラストアルバムとなった『リアル・タイム』の発売記念コンサートが、1992年10月28日に新宿のジャズ・クラブ「インディゴ・ブルー」で開かれたのだが、その時の録音テープが発見され、今回のCD化となった、とのこと。それにしては意外と音が良い。録音も下手に「デッド」にならず、良い感じのスペース感が魅力的。
冒頭の「That's The Way Of The World」から、こってこてにファンキーなティーのアコピが炸裂。粘りに粘るが疾走感抜群、こってこてにファンキーな割に音は鋭角でスッキリ。弾きまくるフレーズのレンジは大変広く、スケールの大きい音の展開。シンプルな割に重厚な響きが不思議なティー独特の和音。この1曲目のアース・ウィンド&ファイアーの名曲のカバー演奏を聴くだけで、ティーのアコピの独特な個性をしっかりと確認できる。
以降、「The Way」「My Funny Valentine」「Strokin'」「In Real Time」と、もうこれは「大リチャード・ティー大会」(笑)。どこもかしこも、あちらもこちらも、どこを取っても、リチャード・ティーのアコピがエレピが炸裂しまくっています。ちなみにパーソネルは、Richard Tee (p,key), Steve Gadd (ds), Ralph MacDonald (per), John Tropea (g), Will Lee (b), Ronnie Cuber (bs), 伊藤君子 (vo)。
伊藤君子のボーカルは、ラストの「Bridge Over Troubled Water(明日に架ける橋)」に飛び入りしたもの。他のメンバーはと見渡せば、いやいや、長年、ティーと様々なセッションを繰り広げてきた、手練のベテラン・ミュージシャンがズラリ。
やはり、ティーのキーボードには、スティーブ・ガッドのドラムがピッタリ。素晴らしい相性で演奏しまくるのは。ラス前9曲目の「Take The A Train(A列車で行こう)」。ティーの初リーダー作『Strokin'』のラストでの名演で有名な大スタンダード・ナンバーだが、このライブ盤での「Take The A Train」も、それに負けず劣らず素晴らしい内容。ティーとガッドの息をもつかせない掛け合いと、適度なテンションが快適な「Take The A Train」。
ただし、ラップっぽい出だしで始まる、8曲目「It's Time(イッツ・タイム)」はメンバー紹介も兼ねた19分以上に渡る長尺演奏で、ラップっぽいティーのボーカルについても、取り立てて何かを感じるものでもなく、ちょっと単調なリズム&ビートも含めて、19分以上に渡る演奏はかなり冗長。記録としては良いが、アルバムとしては、オミットしても良かったのではないかと思う。
このライブが1992年10月28日。このライブの翌年、1993年7月21日にティーは他界する。それを考えると、このライブ音源はかなり貴重なものになる。よくぞリリースしてくれたものだ、と感謝する。
少しラフな部分があって、ライブ音源として秀逸、とまでは言えませんが、ティーのマニアにとっては、相当に貴重な、垂涎もののライブ音源であることには変わりありません。ジャズ者初心者の方々に対してはお勧めとはいきませんが、フュージョン者の方々に対しては、持っていて損は無い「ライブ盤の佳作」としておきたいと思います。
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