ウェアの生涯唯一のリーダー作
昨日から、ジャズ・ベーシストのリーダー作を集中して特集しています。今日は、ベーシスト・マニア御用達、ハードバップ時代のベース職人、Wilbur Ware(ウィルバー・ウェア)の登場。
ベースやドラムは、リーダーの楽器として前面に押し出すのが難しく、いきおい、ベーシストやドラマーがリーダーのアルバムは少ない。ベーシストに至っては、リーダー作を次々と連発するベーシストは数える程しか無い。
ハードバップ時代、ベーシストのリーダー作はこんな感じだった。ここに、Wilbur Wareの『The Chicago Sound』(写真左)がある。1957年10月・11月の録音。ちなみにパーソネルは、Wilbur Ware (b), Johnny Griffin (ts), John Jenkins (as),Junior Mance (p), Wilbur Campbell,Frankie Dunlop (ds)。
さて、ウィルバー・ウェアとは・・・。1923年9月、米国イリノイ州シカゴ生まれ。「変態的」などと言っては失礼極まりないが、 そのサウンド、特にベース・ランニングにおいて、かなり強烈な、独特の個性を放っていたベースマンの一人である。
そんなウェアの生涯唯一のリーダー作である。その音色は独特のものがあり、じっくり聴けば絶対にウェアと判る。でも、アコースティック・ベース(略してアコベ)の音は、他の楽器と比べて表現の幅が狭く、その音色の特色はじっくり聴かなければ判らないことが多い。
それほど、アコベはリーダー作で前面に押し出されても、なかなか、その甲斐が無いことが多い。この生涯唯一のリーダー作でも、確かに、各曲でベースのロング・ソロがフィーチャーされている。しかし、そのロング・ソロを聴いて、直ぐに「これってウェアやん」とはいかない。
ちょっと捻れた重量感溢れるベースではあるんだが、どっかで聴いたことあるかいな〜、なんて思うくらいで、結局、誰かは判らないことが多い。これって、やっぱり、リーダーのベースマンにとって、完全な「逆風」やなあ。アコベの限界である。
しかも、このウェア生涯唯一のリーダー作であるが、ジョニー・グリフィンのテナーとジョン・ジェンキンスのアルトが素晴らしい出来なのだ。うか〜と聴いていると、まるで、グリフィンかジェンキンスのリーダー作の様に聴こえる。
フロント楽器の奏者が素晴らしいパフォーマンスを発揮すると、時に誰のリーダー作か判らない様になってしまうことがままある、というベーシストのリーダー作が陥りやすい代表的なケースである。辛うじて、ウェアのベース・ソロが長いのが救い。それでも、ウェアくらい個性的なアコベであっても、そのソロが前面に押し出て、印象に強く残るということがなかなか難しい。う〜ん辛いなあ。
加えて、このリーダー作のウェアは、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースにまで至らず、気の置けない仲間達とのハードバップのセッションを取り仕切ってみました、って感じに留まっています。
このアルバムを聴くと、やっぱりベーシストのリーダー作って難しいなあ、って思います。ベーシストのウェアのリーダー作というより、ハードバップ時代の気の置けない仲間との、充実した内容のレコーディング・セッションって感じが強いですね。
この『The Chicago Sound』は、ハードバップのアルバムとしては及第点。お世辞にも、飛び抜けて素晴らしい出来とは言えないが、ハードバップの良き雰囲気満載の、聴いていて楽しいアルバムです。肩肘張らずに聴き流すに良いハードバップ盤です。
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