夏はボサノバ・ジャズ・その9 『Cannonball's Bossa Nova』
キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)とは、本名ジュリアン・エドウィン・アダレイ。太ったその姿を「Cannonball」に見立てて、それがニックネームとなり、芸名になった。
マイルス・デイビス・グループのメンバーとして一躍有名になり、その官能的かつファンキーなノリ・ノビのある、それでいて、その奥に繊細さ精緻さを兼ね備えるアルト・サックスが特徴。弟のコルネット奏者ナットともに結成したグループで、ファンキー・ジャズの代表者となった。
キャノンボールのアルトは、ノリ・ノビが素晴らしく、健康優良児的な明るくファンキーな演奏が身上。この健康優良児的なアルト奏者が、ほのぼのとした、ホンワカした雰囲気で聴かせるボサノバ・ジャズにチャレンジしたアルバムがある。そのアルバムとは『Cannonball's Bossa Nova』(写真)。
1962年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Sérgio Mendes (p), Durval Ferreira (g), Octavio Bailly, Jr. (b), Dom Um Romão (ds), Pedro Paulo (tp), Paulo Moura (as)。キャノンボール以外は、ブラジルの現地ミュージシャン。知らない名前ばかりなのは当たり前 w。
このアルバムは、かの敏腕プロデューサーのオリン・キープニュースのプロデュース。CapitolRecordsからのリリースになる。ファンキージャズの人気者キャノンボール・アダレイが、その対極的ともいえるボサノバ亜調の曲を演奏するというものだ。直感として、ミスマッチと言えばミスマッチではある。
まあ、1963年と言えば、米国は空前のボサノバ・ブーム。猫も杓子も「ボサノバ」だった時代の流れからすると、よくある流行に乗った企画モノって感じがするが、易々とそうはさせずに、立派なジャズ・アルバムとして仕立て上げてしまうのが、キャノンボールの優れたところで、ジャズ・ジャイアントの一人である所以である。
バックを勤めるメンバーは、ブラジル人作曲家兼ピアニストのセルジオ・メンデスのバンドがサポート、太陽が眩しいリオのリズムをベースに、ボサノバ・フレーバーを振りまいている。キャノンボールは、そのボサノバ・フレーバーをバックに、類い希な歌心をもって、朗々とボサノバを歌い上げていくところがこのアルバムのハイライトだ。
アントニオ・カルロス・ジョビンの超有名スタンダードである「Corcovado」や「Once I Loved」やジョアン・ドナートの「Minha Saudades」のカヴァーは、ボサノバ・ジャズの第一人者であるスタン・ゲッツよりも、メリハリの聴いた歌心が溢れている分、キャノンボール・アダレイに軍配が上がると僕は思う。
とにかく、ここでのキャノンボール・アダレイのアルトは明るい。輝かんばかりに眩しいアルトの音色で、とかく、ソフトになりがちなボサノバを、メリハリつけて、しっかりと歌い込んでいく様が、実に爽快で、実に健康的で、僕はこのボサノバアルバムが大好きです。
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