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2012年4月 6日 (金曜日)

『Miles Davis In Europe』です。

マイルス・デイヴィスはアコースティックの世界でも、常にジャズ界をリードする「帝王」だった。マイルスはいち早く、ジャズのトレンドを生み出していった。ビ・バップ以降のアコースティック・ジャズのトレンドは、フリー・ジャズ以外、マイルスが先頭を切って開拓していった。

アレンジメントの重要性をいち早く認識したのもマイルスだし、モード奏法にチャレンジし、ジャズとして「演奏出来る形」にしたのもマイルスだ。モードを推し進め、フリー一歩手前の、最大限に自由度の高いインプロビゼーションを実現したのもマイルスだ。

このライブ盤は、1963年4月に録音された『Seven Steps To Heaven』(2012年3月2日のブログ参照)の3ヶ月後に録音された。モードを推し進め、フリー一歩手前の、最大限に自由度の高いインプロビゼーションの実現に向かって進み始めた、マイルスの姿を捉えたライブ盤である。

1963年7月の録音になる。そのライブ盤のタイトルは『Miles Davis In Europe』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds)。マイルスの「黄金のクインテット」からウェイン・ショーターを差し引いて、代わりにジョージ・コールマンがテナーで参加している。

このライブ盤での演奏は、今の耳で聴いても斬新な響きがする。このライブ盤の時点で、既に、モード奏法をベースに自由度の高いインプロビゼーションを既に実現しつつあるところは「驚き」である。まず、マイルスのトランペットのインプロビゼーションのフレーズが実に斬新であり、実に先進的である。今の耳で聴いても先進的な響きがするとは、さすが「帝王」マイルスである。
 

Miles_in_europe

 
その斬新な響きは、バックのリズムセクションの仕業でもある。ピアノのハービー、ベースのロン、ドラムのトニー、この3人のリズムセクションのリズム&ビートは、これまた、今の耳で聴いても斬新な響き。そして、実に自由度の高いリズム&ビートが素晴らしい。まだまだ発展途上という雰囲気ではあるが、それでも、今のジャズ界にも通用するモーダルな演奏レベルを既に保持していることが驚き。

ちなみに、なにかとマイナスの話題として挙がるコールマンのテナーについては、世間の評判通りと言わざるを得ないなあ。なぜ、この時点でテナーはコールマンだったのか。今でも疑問が残る。

マイルスを筆頭に、ハービー、ロン、トニーの、モード奏法をベースにした、自由度の高いインプロビゼーションのレベルと比べると、コールマンのテナーは、特にインプロビゼーションのイマージネーションの面において数段劣る。単純に「シーツ・オブ・サウンド」を吹きまくっている「小コルトレーン」という趣のテナーは「平凡」。

マイルス・バンドとしては、手垢のついた感のあるスタンダード曲「Autumn Leaves」「All Of You」「Walkin'」や十八番の「Milestones」が、 モード奏法をベースにした、自由度の高いインプロビゼーションによって、まるで新しく作曲された曲の様に響き渡る。そして、その演奏の疾走感と高揚感、爽快感は、今でもこの時代のマイルス・バンドだけが保有する唯一無二な個性。

ジャケット・デザインが平凡で損をしている。内容的にはアコースティック・マイルスの佳作として、もっと聴かれるべき作品だと僕は思う。ちなみに、僕はこのアルバム、好きです。

 
 

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Never_giveup_4

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