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2012年3月15日 (木曜日)

RCA時代の傑作の一枚『What's New ?』

RCA時代のロリンズは、一部の評論で言われるほど悪くは無い。というか、二度目の雲隠れから復帰したばかりで、テクニックも歌心もグレードアップしている。悪かろう筈が無い。しかし、諸手を挙げての「五つ星」という感じでは無い。やや難ありの「四つ星」の線なのだ。これがなかなか悩ましい。

な〜んて、勿体ぶった物言いをしているが、RCA時代のリーダー作の中で、このアルバムは良い。このアルバムのロリンズは諸手を挙げての「五つ星」。そのアルバムの名は『What's New ?』(写真左)。しかし、このアルバム、収録された曲について、押さえておきたい事情がある。ちょっとまとめると、このアルバム『What's New ?』のオリジナル原盤の収録曲目は、以下の通りである。

A面
1. If Ever I Would Leave You
2. Jungoso
B面
3. Bluesongo
4. The Night Has a Thousand Eyes
5. Brownskin Girl

しかし、CDの収録曲は以下の通り。CDの2曲目「Don't Stop The Carnival」がLP時代のオリジナル原盤には無い。

1. If Ever I Would Leave You
2. Don't Stop The Carnival
3. Jungoso
4. Bluesongo
5. The Night Has A Thousand Eyes
6. Brownskin Girl

CDに収録されている「Don't Stop The Carnival」はカリプソ調の楽しい曲ではあるが、オリジナルのラスト「Brownskin Girl」もカリプソ調の楽しい演奏で、こちらの「Brownskin Girl」の方が演奏の内容が良い。
 

Rollins_whats_new

 
つまりは「Don't Stop The Carnival」の追加収録は「蛇足」ということになる。ということで、ここでは、オリジナル原盤の「Don't Stop The Carnival」抜きの5曲で、ロリンズのRCA時代の傑作『What's New ?』を語ってみたい。 

さて、この『What's New ?』というアルバムは、1962年の4月〜5月、4回に分けられて収録されたセッションの寄せ集め。期間的には、約1ヶ月半の間に4回のセッションなので、演奏内容についての統一感は維持されている。

ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Jim Hall (g), Bob Cranshaw (b), Ben Riley (ds), Dennis Charles, Frank Charles, Willie Rodriguez (perc)。3人のパーカッションが、このアルバムのアクセント。

この『What's New ?』に収録された曲は長尺の演奏が多く、特に、LP時代にA面を占めていた「If Ever I Would Leave You」と「Jungoso」の2曲は10分を超える長尺演奏であり、ロリンズのテナーを心ゆくまで楽しめる。特に「Jungoso」は実にモーダルな演奏で、ついつい聴き入ってしまう。モーダルなロリンズ。こんなにモーダルな演奏を自家薬籠中のものにするなんて、さすがはロリンズ、と喝采の声を上げたくなる。

2度目の雲隠れの時、テナーの技術研鑽に勤しんだ効果満点で、この10分を超える長尺の2曲でのロリンズのテクニックは抜群である。様々な奏法、様々なテクニックを聴かせてくれて、とにかく迫力満点である。この冒頭の2曲のロリンズのインプロビゼーションには圧倒される。

3曲目の「Bluesongo」は、ロリンズとパーカッションのデュオ。テンション溢れる力強い演奏が素晴らしい。4曲目の大スタンダード「The Night Has A Thousand Eyes」についてはシンプルなアレンジが、ロリンズやホールの演奏を惹き立てて、実に豪気な、実に豪快な演奏である。

そして、ラスト「Brownskin Girl」は、ロリンズお得意の「大カリプソ大会」。謎の陽気なコーラス隊が先導し、とにかく楽しいのなんのって、僕もカリプソが大好きなんで、この曲を聴いて、ついつい踊り出してしまうこともしばしば(笑)。このカリプソナンバーでも、ロリンズはテナーを吹きまくる。それはそれは、とても楽しそうに吹きまくる。

RCA時代のロリンズは、やや難ありの「四つ星」の線が多いのだが、この『What's New ?』は傑作の「五つ星」。2度目の雲隠れからの復帰作であった前作の『The Bridge』と合わせて、この『What's New ?』は、RCA時代のロリンズの傑作である。とにかく痛快。豪快で歌心溢れる、ハイテクニックを併せ持ったロリンズのインプロビゼーションが心ゆくまで楽しめる2枚である。

 
 

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Never_giveup_4

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