アーマッド・ジャマル祭りのラスト
今週は、アーマッド・ジャマル祭り。昨日、今度は最近のジャマルを聴いてみよう、と思った。ということで、2000年に入ってからのジャマルを物色。愛聴盤の一枚が『It's Magic』(写真左)。
2007年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), James Cammack (b), Idris Muhammad (dms), Manolo Badrena (perc)。ベースのJames Cammack、ドラムのIdris Muhammadは、1990年代からの長きに渡っての相棒。と言いながら、ちょっとマイナーな二人ではある。
アーマッド・ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が、1980年代になって、アーシーさがすっかり抜けきって、豪快でメリハリのある力強いタッチが特徴に変化。左手の叩き付けるようなガーン、ゴーンという骨太な音はマッコイ・タイナーばり。右手の早弾きテクニックがフィーチャーされる。しかし、劇的な変化は、この1980年代で一旦の終息をみる。
以上は、昨日のブログの語りの振り返りだが、この2007年録音の『It's Magic』においても、基本的には、1980年代以降の、豪快でメリハリのある力強いタッチ、右手の早弾きテクニックは変わらない。
しかし、左手の叩き付けるようなガーン、ゴーンという骨太な音は穏やかになっている。その分、ピアノを鳴らしまくるような、スケールの大きい弾きっぷりが目立つようになる。
加えて、このアルバム『It's Magic』では、パーカッションを入れて、リズム&ビートにも一工夫入れている。このパーカッションの躍動感とフォーキーな響きが上手い具合に隠し味として作用して、とても聴いていて楽しいピアノ・トリオ+パーカッションの演奏になっている。
そう、とにかく、ここでのジャマルのピアノは聴いていて楽しい。ピアノを鳴らし切っているような、スケールの大きい、幅のある弾きっぷりが、とにかく爽快感抜群。ジャズ・ピアノを聴いているなあ、と心から思わせるような、本当に幅の広い、スケールの大きいピアノを聴かせてくれる。「豪快なメリハリのあるサウンド」が洒脱に聴こえる。
まあ、録音された年、2007年12月と言えば、ジャマルは1930年7月生まれだから、77歳である。右手の早弾きテクニックについては、ちょっと陰りが見え隠れする。最盛期に比べて、ちょっと指が回らないなあ、というところがあるが、それは仕方が無い。77歳である。無理からぬこと。
ジャマルのピアノは、ジャズ・ピアノの時代毎のトレンドを上手く取り入れて、上手くアレンジして聴かせてくれる。つまり、スタイリストというアーティスティックなピアニストというよりは、ジャズ・ピアノを楽しく聴かせてくれるエンタテインメント性が豊かなピアニストと言える。
聴いて楽しいアーマッド・ジャマル。とにかく、ジャマルのリーダー作は一定水準を満たしたものが多く、駄作が少ない。エンタテインメント性が豊かなピアニストとしての面目躍如である。
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