ジャマルのスタイルの「潮目」
昨日に続いて、アーマッド・ジャマルのお話しを・・・。昨日も書いたが、アーマッド・ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が中心。
1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。そんなジャマルのスタイルの「潮目」を捉えたスタジオ録音盤が『The Awakening』(写真左)。
1970年2月のNYでの録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Jamil Nasser (b), Frank Gant (ds)。ジャマル以外、ベースとドラムは僕にとっては無名。それでも、この『The Awakening』では、ジャマルの1960年代終わり〜1970年代のピアノのトレンドである「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」がてんこ盛り。
しかも、アーシーではありながら、決して、俗っぽくならずに、「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」な響きがそこかしこに残っているところが面白い。さすがにスタジオ録音。ライブ盤の様な、勢い一発という感じでは無く、1曲1曲、丁寧で考え抜かれて収録されているところが、このアルバムの良さ。
収録された曲を見渡すと、ハービー・ハンコックの「Dolphin Dance」、オリヴァー・ネルソンの「Stolen Moments」、アントニオ・カルロス・ジョビンの「Wave」といった、メロディーラインが美しく印象的な曲をピックアップしていて、「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が実に映える。
加えて、前半のソロピアノが「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」していて一目置きたくなるスタンダード曲「I Love Music」も素晴らしい内容で実に格好良い。良く考えた選曲で感心する。
ちなみに、このアルバムは、クラブジャズやヒップホップで2次利用されているのだという。1990年代以降、ヒップホップのアーティストたちが、こぞってジャマルのレコードをサンプリング。
その「ジャマルのサンプリング現象」を通じて、ジャマルのオリジナリティ豊かなピアノが再評価されたとのこと。しかも、ジャマルのアルバムの中でも、この『The Awakening』は引用率No.1。ヒップホップ世代にとっては「聖典」のようなものだそうだ。ふーん知らなんだなあ。
この時代の「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」は疾走感抜群、音の粒立ちと湿り感も印象的。加えて、ジャマルの多彩なアドリブも良好。ジャマルの創造性豊かな、実に内容のある、ピアノ・トリオの秀作だと思います。
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