年代毎に異なる顔を持つジャマル
アーマッド・ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。大きく括って、1950〜1960年代までの作品は「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」、1960年代終わり〜1970年代以降の作品は、うってかわって「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が中心になりました。
マイルスが着目した、1958年1月16日、シカゴはThe Pershing Loungeでのライブ録音『But Not For Me』の「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」も悪くは無い。間を活かし、音数を厳選した限りなくシンプルな奏法は魅力的ではある。が、何枚かリーダー作を重ねると、はっきりいって「飽きる」。
ジャズ・ピアニストとして、よっぽど印象的なスタイリストでも無い限り、時代のトレンドに乗ったり、年齢を重ねることによって、そのスタイルが変貌するのは無理も無いこと。ジャマルは、積極的にそのスタイルを変遷していったクチである。
1960年代晩期から1970年代、インパルス・レーベルに吹き込まれた以降の作品は、それまでのしっとりシンプルでオシャレなサウンド」とはうってかわって豪快な激しいサウンドを求めるようになり、「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」へと変貌しました。
その転換点の時代を象徴するアルバムの一枚が『Poinciana Revisited』(写真左)。1969年、Top of the Village Gateでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Sulieman Nasser (b), Frank Gant (ds)。
このアルバムに収録されている「Poinciana」という曲は、先に紹介した、1958年1月16日、シカゴはThe Pershing Loungeでのライブ録音『But Not For Me』にも収録されている。
その時の演奏は「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」。この「しっとりシンプルでオシャレなサウンド」の時代から、この「Poinciana」という曲はジャマルの十八番でした。
そして、この1969年のライブ録音『Poinciana Revisited』でも「Poinciana」はしっかりと演奏されていて、如何にジャマルの演奏スタイルが「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌したかが良く判る。「変貌の見本」のような演奏に仕上がっていてとても面白い。
他にも「Have You Met Miss Jones?」や「Lament」「Theme from Valley of the Dolls」「Frank's Tune」など魅力的な演奏全7曲が収められています。いずれの演奏も実に魅力的。「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」への転換は大成功です。
確かに、1950年代に比べて、明らかに多弁になっています。もはや、間を活かし、音数を厳選した限りなくシンプルな奏法は微塵もありません。
しかし、「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変化し、多弁になった分、演奏の構成やメロディーセンスは洗練され、更にエンタテイメント性が加わったことによって、聴いていて楽しく、味わい深いものになっています。
特にブルース調の曲での、「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」でありながら「さらりと淡白な」ピアノの響きは聴く度に填まります。長く聴き親しむことにより、じんわりじんわりと、その心地よさが耳に馴染んでくる感じです。
ジャズ・ピアノ好きの方々、どちらかと言えば、ジャズ・ピアノのスタイルについてある程度、理解出来ていて、スタイルの違いとスタイルの好みが判るジャズ者中級者の方々に是非ともお勧めの一枚です。
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