クロスオーバーなデスモンド
いやいやいや〜激しく寒い朝である。うっすらと屋根に雪が積もっているではないか。冷蔵庫の中を歩いて最寄りの駅まで通っているような感覚。関東地方の中でも暖かい方の千葉県ですら、この寒さである。北の地方は推して知るべし、である。
あんまりに寒いので、今週は、ウォームで円やかなアルト、ポール・デスモンドで突っ走ることにする(笑)。今日は、イージーリスニング・ジャズの時代のデスモンドである。
1960年代の終わりから台頭してきた「クロスオーバー・ジャズ」。ロックとジャズの融合とか、ジャズとクラシックの融合という、異種格闘技のような感じのジャズ。そんな時代のトレンドの中で、イージーリスニング・ジャズも台頭しつつあった。
クロスオーバー・ジャズ、イージーリスニング・ジャズの専門レーベルが「CTIレーベル」。CTIレーベルは、1967年、プロデューサーのクリード・テイラーによって創設された。ジャズの大衆化を図るために設立され、クロスオーバー・ジャズのブームの中核を担った(Wikipediaより)。
そんなCTIレーベルと契約を結んだデスモンド。CTIから数々のクロスオーバー・ジャズに乗った佳作をリリースする。特に、デスモンドの場合は、クラシックとジャズの融合、クラシックの弦のアレンジに乗って、ジャズ・スタンダードの焼き直しやボサノバ、サンバなどの名曲をカバーした。電気楽器とはあまり付き合わず、基本はアコースティックなところが、ハードバップ時代からのベテランらしいところである。
そんなデスモンドの異種格闘技的なアルバムが『From the Hot Afternoon』(写真)。デスモンドのイージーリスニング・ジャズの傑作。全編、ブラジルの世界。ボサノバ&サンバをやらせたら、デスモンドの円やかなアルトは最適。さすがCTIレーベル、さすがはクリード・テイラー。慧眼恐るべしである。
しかし、厳密に言うと、このアルバムは、Milton Nascimento & Edu Loboの作品集。改めて、よくよく収録曲を眺めると、10曲のうち、Milton Nascimentoの曲が6曲、Edu Loboの関係する曲が4曲。ブラジル音楽といっても、ボサノバ&サンバでなく、ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ、つまりはMPBの曲を主体にしたアルバムです。く〜、小粋やなあ。むっちゃ格好ええ企画アルバムですわ。
演奏の雰囲気は「ブラジル」。基本的にはボサノバ&サンバと同等の雰囲気です。特に、4曲目の「To Say Goodbye」は、切々と女心を唄うWanda De Sahの唄が実に魅惑的です。このWanda De Sahの歌声に呼応するように吹き上げるデスモンドのウォームで円やかなアルト・サックス。デスモンドのアルトと魅惑的なMPBの女性ボーカルは相性抜群である。
そして、なんと、Edu Lobo本人がGuitarとVocalで2曲に参加。おやおや、と思ってパーソネルを眺め直してみると、基本的にブラジルのミュージシャンとのコラボではないか。なるほど、演奏の雰囲気が米国っぽくないな、ジャズっぽくないな、と思ったがそういうことなんですね。
弦のアレンジャーは、ドン・セベスキーなので、ちょっと古さを感じてしまうのですが、1969年の録音という観点で聴き直すと、これはこれで、当時の流行というものが感じられて、これはこれで「あり」かな、と思います。古さもここでは「個性」として良いと思います。
このアルバムの音が好きなら、クロスオーバー・ジャズを楽しめると思いますし、このアルバムの音が嫌いなら、クロスオーバー・ジャズを楽しめることは無いと思います。クロスオーバー・ジャズの基準となるような音が詰まっている、クロスオーバー時代の生き証人のようなアルバムです。
良いクロスオーバー・ジャズ、イージーリスニング・ジャズのアルバムです。1960年代終わりから1970年代前半のクロスオーバーの時代の音をしっかりと感じる事が出来ます。もちろん、デスモンドのウォームで円やかなアルトもバッチリ堪能できます。
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