こってこてのR&B曲のカバー集
「ファンキー&ソウルフル」を追求すると、ついには「ストリート・ミュージック」に行き着く。このガッド・ギャングも「ファンキー&ソウルフル」を追求していって、ついには「ストリート・ミュージック」に行き着いた。
そんな素敵なセカンド・アルバムが、The Gadd Gang『Here & Now』(写真左)。このセカンド・アルバムでは「ストリート・ミュージック」的なR&Bの名曲のカバーが特徴的。こってこてのR&Bカバー集なんだが、バリサクとアコベの低音の威力で、重心の低い、こってこてファンキーなフュージョン・カバーになっている。これって、フュージョン・ジャズでは他に無い個性。実に魅力的。
それぞれの選曲も良いのだが、何と言っても、メンバー達が実に楽しそうに演奏している、このアルバムの「楽しい雰囲気」が最高。この実に楽しい雰囲気の中、R&Bの名曲たちが、ガッド・ギャングの手で次々にカバーされていく。
最初の1曲目は、オーティス・レディングの1965年のヒット曲「お前を離さない」でファンキーに疾走する。2曲目はメドレーで、テンプテーションの1965年のヒット曲「マイ・ガール」で渋く、ソウルフルに歌い上げながら、ジミ・ヘンドリックスのトリオ=バンド・オブ・ジプシーの「チェンジス」で、バリバリファンキーに迫る。3曲目は、キング・カーティス、1964年初出の「ソウル・セレナーデ」は、ミドルテンポで、実に渋く、ファンキーにアレンジメントされている。この冒頭の3曲は、かなりの「聴きもの」である。
特に「マイ・ガール」は、個人的に涙が出るほど大好きな曲で、テンプテーションのオリジナル・バージョンは、学生時代、周りが呆れるほど繰り返し聴いたものだ。そんな大のお気に入りR&B曲の、ガッド・ギャングによるカバーである「My Girl〜Them Changes」。メンバーそれぞれの熱演が素晴らしい。ガッド・ギャングのベスト・プレイの一つだと僕は思う。
4曲目は、日本でも人気の、プロコル・ハルムの「A Whiter Shade Of Pale(青い影)」(1967年)を、実に「ソフト&メロウ」かつファンキーに歌い上げる。この「A Whiter Shade Of Pale」。これはロック曲。R&B曲では無いが、アレンジはコテコテのR&B仕様。凄くベッタベタなカバーだが潔くて心地良し。
5曲目は唯一のオリジナルを挟んで、6曲目は、1943年初出のデューク・エリントン楽団の「昔はよかったね」は実にダンサフルで、踊り出したくなる。実にファンキーでR&Bなアレンジが素敵だ。7曲目は、イタリアのシンガー=ソングライター、ピノ・ダニエリの「ケ・オーレ・ソ」で、この曲の演奏は、ガッド・ギャングの「ソフト&メロウ」な側面を聴かせてくれる。
8曲目は、スティービー・ワンダーの1970年の名曲「涙をとどけて」で、再び、ファンキーで、ダンサフルな演奏に立ち返り、9曲目、アメリカ人なら誰でも知っている裏国歌「アメリカ・ザ・ビューティフル」で締めくくる。
そして、最後に特筆すべきは、コーネル・デュプリーのファンキー・ギター。このガッド・ギャングの『Here & Now』って、コーネル・デュプリーのギターが素晴らしい。デュプリーって、もともとR&B志向なんだが、このアルバムで、ど真ん中のR&Bをカバーしているってこともあって、バリバリに弾きまくっている。デュプリーのベストプレイのひとつだろう。
若い頃、この『Here & Now』は、あまりにコッテコテのR&B曲のカバー盤なので、そのあまりにあからさまなカバーの仕方に気恥ずかしさを感じて、ちょっと疎遠になった時期がある。50歳を過ぎた今では、そんなこと、全く無くて、このあまりにあからさまなカバーが潔くて心地良い
ま、人間、年と共に音楽に対する許容量が増えるというのか、懐が深くなるというのか、若い頃、なかなか馴染めなかったアルバムが、50歳を過ぎた今では意外と「イケる」ということが多々ある。この傾向、僕だけかなあ。
とにかく素晴らしい、R&Bカバーのフュージョン・アルバムとして大推薦したい。良いアルバムです。
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コーネル・デュプリーの柔らかくて闊達な音色は本当にいいですね。
もう生演奏を聴くことは叶いませんが…。
投稿: rei320 | 2013年1月19日 (土曜日) 13時21分