こんなアルバムあったんや・9
当ブログでは、幾つかの特集シリーズがあります。右の「カテゴリー」にあるのですが、今日の「こんなアルバムあったんや」シリーズは、ジャズ者中堅〜ベテランクラスの方々向けかな。ジャズ・フュージョンの異色盤・企画盤・珍盤・迷盤の類をご紹介しています。
「こんなアルバムあったんや」シリーズ、今日は第9回目。今日はフュージョン・ジャズの「こんなアルバムあったんや」。
「ヒロシマ(Hiroshima)」というバンドがある。1974年に日系アメリカ人三世のメンバーにより結成されたフュージョン・バンドである。ちなみにメンバーは、Dan Kuramoto (fl,Syakuhachi), June Kuramoto (Koto), Danny Yamamoto (ds), Kimo Cornwell (Key), Dean Cortez (b), Shoji Kameda (Taiko)。
担当する楽器を見ると「んっ〜」と思う。「琴」「太鼓」「尺八」が入っている。そう、「ヒロシマ(Hiroshima)」というバンドは、太鼓や琴、尺八など日本の伝統楽器を用いたフュージョン・バンドである。これって、米国人独特の「日本的感覚」であり、直接的に、太鼓や琴、尺八などを用いて音楽を演奏するだけで「オリエンタル」、若しくは「ジャパニーズ」。
でも、日本人からすると、これは実に「こっ恥ずかしい」仕業であり、出来れば、聴かなかったことにしてしまいたい欲求に駆られる。聴いてしまったら、とにかく暫く「据わりが悪い」。とにかく、太鼓や琴、尺八など日本の伝統楽器を用いてフュージョン・ジャズをやるなんて、これって「キワモノ」扱いされて当然、という雰囲気になる。
そんな彼らのデビューアルバムが『Hiroshima』(写真左)。ジャケット・デザインを見るだけで、「キワモノ」の雰囲気がプンプンする(笑)。1979年のリリース。1979年と言えば、フュージョン・ジャズの流行が下降線になりつつあった「フュージョン末期」の頃。
「フュージョン末期」になると、この時期にデビューしてくるフュージョン・バンドは、ジャズから少し離れたところにあって、当時流行だったソフト&メロウな要素をバッチリ反映して、なぜか必ずボーカルものが入っているものが大多数。どう考えたって、もう、フュージョン・ジャズとは呼べんやろう、という、R&B、ポップス、ワールドミュージック、そして、最後にちょろっとジャズ、といった電気AOR的なものばかり。
この『Hiroshima』も例外では無い。フュージョン・ジャズ的な演奏の中に、R&B、ポップス、AORをごった煮にして、ワールドミュージック的な要素に「日本の伝統楽器」を活用するという強引な仕掛け。演奏能力は決して高くないし、ボーカル曲は甘ったるい。アルバム全体の音は明らかに「フュージョン末期」を代表する音作りである。
だが、アルバム全体を聴き直して見ると、楽曲それぞれの出来は「まずまず」で、ジューン・クラモトの琴のセンスは「なかなか」のもの。エレギの代わりの「琴」なのだが、これがまずまず成功していることは確か。ぎりぎり「キワモノ」を回避している。とりあえず、アルバム全編聴き通せるのだから、この『Hiroshima』というアルバム、フュージョン末期の佳作ではある。
ヒロシマの音楽は、何かを主張しようというものではない。ヒロシマの音楽は、米国ならではの「お気楽なキワモノ風」の作りではあるが、演奏全体の出来はまずまずで、音の雰囲気については、古さは否めませんが、忘れた頃に「ちょろっと」聴くには、なかなか面白い盤ではある。
太鼓や琴、尺八など日本の伝統楽器を用いたフュージョン・バンドということで、1979年の頃、大学生でジャズ者初心者駆け出しの頃であった僕は、このデビューアルバム『Hiroshima』については「どん引き」(笑)。他人がかける『Hiroshima』は仕方無しに最後まで聴くが、自分自らリクエストすることは無かったし、自分でこの盤を手にすることは無かったなあ。友人に無理矢理買わせたのを覚えている(笑)。
この「ヒロシマ(Hiroshima)」というバンド、現在も活動中で、時代と共に、フュージョン・ジャズから離れてきているが、その人気は衰えることがなく、むしろ高まっている、とのこと。やっぱり、米国って、米国人独特の「日本的感覚」があって、直接的に、太鼓や琴、尺八などを用いて音楽を演奏するだけで「オリエンタル」、若しくは「ジャパニーズ」になって、遂には「ファンタスティック」となるのかなあ。
でも、現在でも健在ってところが、1979年、デビューアルバムを、なんやかんや言いながら聴いていた僕達にとっては、お互い「同志」の様な、なんだか「心強いもの」を感じますね〜(笑)。
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