若き日のエリック・アレキサンダー
ジャズには色々な雰囲気の演奏がある。それはそれは凄い数の雰囲気のバリエーションがあって、その時その時で色々な感じ方が出来て、とにかくジャズは楽しい、
そんな色々な雰囲気のジャズの中で、一人前になったミュージシャンの駆け出しの頃、初々しく若々しい溌剌とした演奏を聴くのも、実は密かな楽しみである。駆け出しの頃は、自分のやりたいことを精一杯やろうとし、テクニックの未熟なところは情熱と気合いでカバーする。そんな、そのミュージシャンの「素」を感じる事ができることが一番の楽しみ。
最近、たまに思い出しては流しているアルバムがある。Eric Alexanderの『New York Calling』(写真左)。エリック・アレキサンダーは1968年生まれ。1991年のセロニアス・モンク・コンペティションで銀賞獲得以来、NYに進出。そんなエリックが、翌年1992年12月に録音した、実質、エリックのデビュー作に位置づけられるアルバムである。
とにかく、全編に渡って初々しく若々しい溌剌とした演奏がギッシリ詰まっている。ちなみにパーソナルは、Eric Alexander (ts), John Swana (tp,flh), Richard Wyands (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。しかし、パーソネルを見渡すと、エリック以外、全く知らないメンバーやなあ。今の時代に生き残っているのは、エリック以外にいない。
それでも、このアルバムの内容は実に良い。確かに、テクニック的にはちょっとおぼつかないところも見え隠れするし、意余って力足らずの一面も見え隠れする。しかし、それらのマイナス面を補って余りある溌剌とした演奏。特に、テナーのエリックは堂々としたブロウで、当時、20代前半とは思えない充実した内容です。
エリックのテナーは個性に満ちあふれている。テナーなので、当然、コルトレーンをコピるのかと思いきや、確かにコルトレーンっぽいトーンではあるんだが、コルトレーンよりも爽やかというか乾いているというか、そう「軽快」である。アドリブのフレーズもシーツ・オブ・サウンドを踏襲することはせず、どちらかと言えば「歌心」優先。ロリンズのブロウをシンプルにしたような、親しみ易いフレーズが魅力。
このアルバムでのエリックのテナーは実に個性的。なるほど、当時、期待の若手ナンバーワンだったことも頷けます。しかし、残念なのは最近のエリックはコルトレーンに追従する様に、テクニック優先な演奏が主になっていて、この若手駆け出しの頃の「歌心溢れるフレーズ」と「軽快なトーン」が影を潜めているんですね。そろそろ、エリックに「初心」に戻って欲しいです。
一人前になったミュージシャンの駆け出しの頃、初々しく若々しい溌剌とした演奏を聴くのも、実は密かな楽しみである。このアルバムでのエリック・アレキサンダーは輝いている。その輝きが「音源」として、このアルバム『New York Calling』に記録されている。良いアルバムです。
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