エリック・リードは「端正」
エリック・リードは1970年6月、フィラデルフィア生れ。ということは、今年で41歳。ジャズ・ピアニストとしては中堅に位置する年頃である。まだまだ若手の精鋭と思っていたんだが、もう41歳なんやね。
エリック・リードのピアノは「端正」。マッコイ・タイナーの様にハンマー打法よろしくガンゴン鍵盤を叩く様に弾きまくる力強さと、優しく柔らかなロマンチシズム溢れる旋律を弾きこなす繊細さとが同居する。粘りは無く、良く手が回る。ファンキーな要素はほとんど感じない程、ピアノの音質は「ドライ」。切れ味が良いというよりは、粒だちが良いピアノ。
「端正」なピアノは、なかなかその個性を愛でることが難しい。そんなピアノは、小難しいオリジナル曲を聴くよりは、スタンダードや有名なポップ曲を「あるテーマ」で詰め込んだ企画盤で、その「端正」なピアノを楽しむのが良い。
エリック・リードのリーダー作に、そんなアルバムはあるんかいな、と探してみたら、これがあるんですね。そのタイトルは『Manhattan Melodies』(写真左)。1998年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Eric Reed (p), Reginald Veal (b), Gregory Hutchinson (ds), Dianne Reeves(vo), Renato Thoms (per)。パーカッションが入るので、ちょっと反則ですが、ピアノ・トリオ盤と言って良いでしょう。
まず、収録された曲がどれも魅力的です。良い曲を選んでますね。ちなみに収録された曲を並べてみると、以下の様になります。
1. 59th Street Bridge Song, The (Feelin' Groovy)
2. Manhattan Melodies
3. Harlemania: Drop Me Off In Harlem / Harlem Nocturne
/Take The "A" Train
4. New York City Blues (aka Doc's Blues)
5. Letter To Betty Carter
6. Blues Five Spot
7. Puttin' On The Ritz
8. Englishman In New York
9. NYC Medley: Autumn In New York / Skating In Central Park
/ Central Park West
10. Theme From "New York, New York"
ねっ、なかなか魅力的なラインアップでしょう。タイトル通り、ニューヨークを題材にした名曲がズラリ。5曲目の「 Letter To Betty Carter」では、ゲストのダイアン・リーブスのボーカルが聴けます。
このアルバム、音も良くて、リズム・セクションのレジナルド・ヴィールのベースがブンブン鳴り響き、グレゴリー・ハッチンソンのドラムが、カーンコーンキーンコココカカカと小気味良い響きを醸し出す。そこに、端正なリードのピアノがガーンゴーンガガガと力強く乱舞したかと思えば、囁くように優しく旋律をつま弾いたり、ドライなタッチで粒立ちよくピアノを鳴り響かせます。
良いピアノ盤です。エリック・リードの個性豊かなピアノが十二分に楽しめます。リードのピアノは正統派なので、変な癖が無い分、飽きることがありません。定期的に何度も引き出してきては聴いてしまう、そんな不思議な魅力があります。端正な個性が安心感に繋がるのかなあ。とにかく、良いジャズ・ピアノです。他のアルバムも集めてみたくなりますね。
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