ちょっと際物風のコルトレーン盤
ジャズ者ベテランとしては、やはり、ジョン・コルトレーンのリーダー作の正式盤くらいは全て所有していないといけないし、それを全て、ある程度聴き込んで、語れるくらいでないとなあ、と思って、コルトレーンの聴き直しを始めて、アルバム毎にブログに語ることを続けて早1年が経過する。
コルトレーンのリーダー作を聴き直してみて、改めて思うのは、コルトレーンの諸作は奥が深い。かつ、バリエーションの裾野が広くて、思ったより時間がかかるが、これはこれで、とても面白い。若い頃は、コルトレーンのリーダー作って、結構、ハードで難しい、って印象が強かったんだが、歳を取って聴き直して見ると、ちっとも難しくないし、ちっともハードでは無い。
今年は公私ともに色々とあったので、なかなかアルバムをじっくりと楽しむ時間がまとまってとれなかったので、コルトレーンの聴き直しは延々続いて来年に持ち越しだが、とにかく、コルトレーンの聴き直しは結構、面白い。まあ、今の耳で聴くと、確かに名盤ばかりではないけどね。時に、これはなんなんだ、という演奏やアルバムに出くわすこともあるが、それはそれで面白い。
John Coltrane『Impressions』(写真左)。このアルバムも中身をじっくりと吟味すると、ちょっと「パチモン」の香りがする名盤(?)である。タイトルからはライブ録音の音源が含まれているなんてことは全く感じないが、アルバムに収録された全5曲中、2曲がライブ音源。そのライブ音源は、1曲目の「India」と3曲目の「Impressions」。どちらのライブ音源も、かの有名な、1961年11月のヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音。
今では、『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』として、その全貌が明らかになり、実は、共演のエリック・ドルフィーが素晴らしい出来で、コルトレーンはドルフィーに当てられてかどうかは判らないが、あまり良いパフォーマンスを残していない、ということが判っている。しかし、この『Impressions』では、そんな不調なコルトレーンのパフォーマンスの中でも、まずまずの内容を残しているもの、そして、決して、ドルフィーが目立たないものを選んで収録している。
まずまずの内容を残しているとは言え、改めて聴き直して見ても、このライブ音源でのコルトレーンは好調とは言えない。なんだか、迷いに迷って、今までの手癖よろしく、適当にアドリブ・フレーズを流しているように聴こえる。なんだかなあ、という印象はぬぐえない。
そんなライブ音源より、残り3曲のスタジオ録音の方が断然良い。2曲目「Up 'Gainst The Wall」と4曲目「After The Rain」、5曲目「Dear Old Stockholm」がスタジオ録音になる。特に、スローなテンポで印象的なブロウが素晴らしい「After The Rain」は「かなりの絶品」。そして、思わず、コルトレーンの名演「My Favorite Things」にも勝るとも劣らない、素晴らしいインプロビゼーションを展開する「Dear Old Stockholm」は名演中の名演だと僕は思う。
この『Impressions』、そんなライブ音源とスタジオ録音のごった煮収録の「やっつけ的でパチモン的」な、ちょっと際物風のアルバムですが、ライブ音源よりスタジオ録音の方が良い。愛聴している。スタジオ録音の3曲の内容が際立っていて、なんとか、コルトレーンのリーダーアルバムの一枚として、その地位を保っています。
コルトレーンのアルバムって、こういう隠れ名盤があったりするから、とても楽しい。
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