ライオネル・ハンプトンを愛でる
ライオネル・ハンプトン。ジャズにおいてヴァイブの存在を広めた最初のミュージシャン。1908年生まれで、2002年8月の逝去なので、94歳という長寿を全うした。
ハンプトンとヴァイブとの出会いのエピソードが面白く、ルイ・アームストロングのレコーディングに参加した時に、スタジオに置いてあったヴァイブを弾いてみるようにアームストロングから言われたのがきっかけらしい。
しかし、人間、何が幸いするか判らない。このヴァイブを引っさげて、クラリネット奏者、スイング・ジャズの雄、ベニー・グッドマンの楽団に参加する。このベニー・グッドマン楽団で、ライオネル・ハンプトンは、スター奏者として大活躍する。
このベニー・グッドマン楽団へのハンプトンの参加は、当時、かなりエポック・メイキングな出来事だったことが、学生時代に判明する。人種の壁が厚かった時代に白人の人気バンドに黒人のミュージシャンが参加したという点でも画期的な出来事でだったのだ。
僕は、ライオネル・ハンプトンは、ジャズを本格的に聴き始める前から知っていた。それは、「ベニー・グッドマン物語」という映画に出演していたからである。ハンプトンとグッドマンの出会いのシーンがあって、ハンプトンが魔法のような超絶技巧なテクニックで、ヴァイブを弾きまくり、グッドマンが感じ入って入団を勧める。確かに、ここで「彼は黒人だぞ」なんて揶揄する台詞があった記憶がある(うろ覚えだけど)。
映画でもそのプレイの様子は良く判ったが、ハンプトンのヴァイブは端正で明快。エンタテイメント性を発揮しつつ、明るい雰囲気を湛えながらの超絶技巧なテクニックは、親近感を覚えつつ、そのテクニックに感嘆するという、ジャズ者初心者からベテランまで、経験・年齢問わず、広く楽しむ事の出来るもの。
ハンプトンの演奏のベースはスウィング。しかし、彼のテクニックと音楽性の豊かさは、ビ・バップやハード・バップという時代にも十分に対応し、そのエンタテインメント性は陰ることは無かった。
最近、アート・テイタムのグループ・サウンズを勉強していて、そんなハンプトンのヴァイブを愛でるに最適なアルバム2枚に出会った。その名も『The Lionel Hampton Art Tatum Buddy Rich Trio』(写真左)と『Art Tatum-Lionel Hampton-Buddy Rich... Again!』(写真右)の2枚。
2枚ともパーソネルは同じ。ちなみにパーソネルは、Lionel Hampton (vib), Art Tatum (p), Buddy Rich (ds)。どちらも、1955年8月のセッションを2枚に分けて収録したもの。
良い雰囲気のセッション・アルバムです。アート・テイタムの神懸かり的なテクニックのピアノはもとより、ライオネル・ハンプトンの端正で明快なヴァイブが十分に堪能できます。バディ・リッチのドラムも堅実なリズム・キープが実に職人芸的。
ライオネル・ハンプトンのヴァイブは端正で明快。基本はスイング。ビ・バップやハード・バップの複雑なコード進行には決して迎合しない、我が道を行くインプロビゼーションが潔い。しかし、逆に、インプロビゼーションにバリエーションは少ない。2枚続けて聴くと、ハンプトンのアドリブ・パターンはほぼ読めてしまいます。
それでも、テクニックは確かで、アドリブ・パターンは明快。やはり、ジャズにおいてヴァイブの存在を広めた最初のミュージシャンとして、聴く価値は十分にあるものです。
今回、ご紹介の2枚は、アート・テイタムのグループ・サウンズに関する「お勉強」、アルバムの体系立った「聴き進め」の副産物。思わぬ出会いに「ジャズってやっぱりええなあ」を連発してしまいました(笑)。
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