ロッド・スチュワートの最高傑作
重税の英国を逃れて、大西洋を渡ってNYに降り立ったロッド・スチュワート(Rod Stewart)。そのロッド・スチュワートの最高の名盤である。タイトル良し、ジャケット良し、コンセプト良し、演奏良し、ボーカル良し。基本的に非の打ち所の無いアルバムである。その名も『Atlantic Crossing』(写真左)。1975年のリリース。
冷静に聴くと、やっていることはR&Bとロックンロールと、英国時代と変わりは無い。しかし、トム・ダウトのプロデュースを得て、アルバム・コンセプトがしっかりと確立され、アルバムの曲の構成も面白い工夫が見える。
LP時代のA面を占める「Fast Side」、B面を占める「Slow Side」。速いテンポが中心のA面、ユッタリとしたテンポが中心のB面。この演奏のテンポを中心としてより分けられた、ロッドの珠玉のボーカル。これが実に効果的。ノリノリで聴くA面、じっくりと腰を落ち着けて聴くB面。この工夫を始めとするプロデュースの手腕がこのアルバムを名盤に押し上げた。
収録された曲も選りすぐりの名曲ばかり。駄曲、捨て曲の類は皆無。どの曲も素晴らしい出来。アレンジの良く、ロッドのボーカルも絶好調。祖国英国を離れて、米国に移り住んで一旗揚げようとするロッドの心意気が伝わってくる。
やっていることはR&Bとロックンロールと、英国時代と変わりは無いが、このアルバムで、より洗練された素晴らしい出来となっているのが「バラード曲」。ロッドのバラード唱法は、このアルバムで確立されたと言って良い。これは、プロデュースとバック・バンドの演奏能力の賜。ロッドは大西洋を渡って、優れたプロデュースに恵まれ、優れたバック・バンドに出会った。
特に、バック・バンドは特筆されて良い。ブッカーT.&ザMG’s、メンフィス・ホーンズ、マッスルショールズのミュージシャンたちなど、ロッドが長年憧れた、真に米国的な「リズム&ビート」そして「フレーズ&音色」。英国系のミュージシャンには、なかなか出せないアーシーなリズム&ビート、そして、米国ルーツ・ミュージック的な「フレーズ&音色」。
ラストの「セイリング」だけがクローズアップされる昨今だが、このアルバムの全曲を聴けば、このラストの「セイリング」は、ラストのクーリング・ダウンの仕掛けだということが良く判るだろう。このアルバムは、大ヒット曲「セイリング」の為に制作されたアルバムではない。ラストの「セイリング」は、その前に控える珠玉の名演を惹き立てる為に存在する。
セールス的にもまずまずの成功を収めた。アルバム『Atlantic Crossing』自体は、全英1位・全米9位。シングルについては「Sailing」(日本仕様ジャケットは写真右)が、全英4週連続1位・全米58位。「I Don't Want to Talk About It(もう話したくない)」が、全英4週連続1位・全米46位。ロッドの「アトランティック・クロッシング(大西洋を越えて米国へ)」は成功した。
良いアルバムです。ロッド・スチュワートのアルバムをまず一枚という向きには、この『Atlantic Crossing』がベストでしょう。とにかく、聴き易い内容で、かつ、ロッドの個性が十分に体験することが出来る。
アルバム・ジャケットのデザインは良いし、タイトルにも意味があって、とにかく、ロックのアルバムとして、かなりの内容を誇る名盤です。ロッド・スチュワートの最高傑作と言い切ってしまいましょう。
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