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2011年9月16日 (金曜日)

う〜ん、どうしたもんかなあ

Hannibal Marvin Peterson(ハンニバル・マービン・ピーターソン)。ギル・エヴァンス・オーケストラのレギュラー・トランペッターとしても活躍し、「トランペットのコルトレーン」「ジャズ・トランペット界のモハメッド・アリ」とも称されるトランペット奏者。

僕は、ギル・エヴァンス・オーケストラのレギュラー・トランペッターとしてのハンニバル・マービン・ピーターソンとして出会った。ハイノートが魅力的で、ほとんどフリーキーでエモーショナルなトランペットが魅力的で、いつか彼のとソロ・アルバムを聴いてみたいと思っていた。

どのジャズ盤紹介本も、ハンニバル・マービン・ピーターソンのソロ・アルバムの代表的名盤は、MPS 盤『ハンニバル』を挙げるのだが、このアルバムはCDとして廃盤になって久しい。中古LPも数が少なく、どうしたもんか、と長年、悩み続ける。

そして、最近、ネットを徘徊していて、見つけたハンニバル・マービン・ピーターソンのアルバムが『Hannibal In Antibes』(写真左)。こちらはenja盤。ちなみにパーソネルは、Marvin ‘Hannibal’ Peterson (tp), George Adams (fl, ts), Diedre Murray (cello), Steve Neil (b), Makaya Ntshoko (ds)。1977年7月20日、Antibes Jazz Festivalでのライブ録音である。

しかし、う〜ん、どうしたもんかなあ、このライブ盤では、ハンニバル・マービン・ピーターソンはあまり前面で出てこない。冒頭は、フリーキーなドラムソロが延々と続く。このライブ盤で一番目立っているのは、テナー&フルートを担当するジョージ・アダムス。といって、ジョージ・アダムスだって、ハッとするような瞬間は無い。
 

Hannibai_in_antibes

 
ハンニバル・マービン・ピーターソンは吹くには吹くが、こちらもハッとするような瞬間は無く、伝統のジャズ・フォーマットの範囲内で、なんとかフリーなブロウイングを繰り広げるだけ。もともとトランペットは、その構造上、長時間のブロウがし難い楽器なんだが、このライブ盤では、ハンニバル・マービン・ピーターソンはちょっと苦しい。

このライブ盤ではハンニバル・マービン・ピーターソンのフリーなトランペットを聴いていると、何故か、マイルスのフリー・ブロウイングが、マイルスのトランペットのテクニックが如何に優れているか、をいうこと再認識する。

例えば、マイルスの伝説的なライブ大名盤『Live At The Pluggednickel』での、伝統の範囲には留まってはいるが、限りなくフリーに近い、自由闊達、縦横無尽、かつエモーショナルで前衛的なマイルスのトランペットは、この『Hannibal In Antibes』でのハンニバルの比では無い。

フリー・ジャズにおける寅ペット奏者は実に数が少ない。ハンニバル・マービン・ピーターソンはその数少ない、フリー・ジャズにおけるトランペット奏者ではあるが、このアルバムを聴く限り、マイルスの足下にも及ばないのは残念な限り。

ちょっと辛口で申し訳ないが、一言で言って、この『Hannibal In Antibes』は、ハンニバル・マービン・ピーターソンのソロ作としても「普通」の類だろう。といって内容的に良くないか、と言えばそれは違う。共演者のパフォーマンスを含めて「普通」の内容です。突出したものが希薄。

ハンニバル・マービン・ピーターソンの魅力を感じるには、ギル・エヴァンス・オーケストラの諸作を聴いた方が良いと思います。安易に手に入れなくても「心痛まない」ライブ盤なので、入手し易いからと言って、無理に手にしなくても良いかと思います。

このライブ盤のみで、ハンニバル・マービン・ピーターソンのトランペットの力量を判断される方が、僕はハンニバル・マービン・ピーターソンにとって不幸ではないか、と思います。

 

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Fight_3
 
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