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2011年9月23日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・29

久々に「ジャズ喫茶で流したい」シリーズです。今日は第29回目。今までの「ジャズ喫茶で流したい」の記事は、このブログの右のガイドの「カテゴリー」で、ここの「ジャズ喫茶で流したい」をクリックしていただければ、今までの記事が検索できます。過去の記事もよろしければお楽しみ下さい。

さて、長年、ジャズを聴いていると、全く前触れ無しに「これは」と思うアルバムに出くわすことがある。しかも、それがジャズ本やジャズ雑誌などでほとんど採り上げられること無いアルバムであればあるほど、その出会いはもう痛快ですらある。

David Murray『Morning Song』(写真左)。Ed Blackwell, John Hicks, David Murray, Reggie Workmanと強面な面子が並ぶが、ガッツの入った純ジャズ。1983年の録音。

Ed Blackwell(エド・ブラックウェル)。自由度が高く、限りなくフリーキーでありながら、その根底に伝統的でアーシーなフィーリングを持ったドラミングが特徴。フリージャズの鬼才テナー、オーネット・コールマンやアーチー・シェップとの共演歴が目を惹く。フリージャズの黎明期から発展期のキーポイントとなるアルバムに参加している。

John Hicks(ジョン・ヒックス)。なんしか、エネルギッシュなピアニストだったなあ、という思い出が先に立つ。ファラオ・サンダースのカルテットへの参加が印象的。ばりばりアーシーでリリカルな音を出しつつ、強烈なドライヴ感を醸し出すパワー・プレイが特徴。「ミニ・マッコイ・タイナー」と評されたことも。

Reggie Workman(レジー・ワークマン)。1960年代、ハードバップ後期から活躍しているベテラン・ベースマン。ジョン・コルトレーンのカルテットに加入、アーチー・シェップとの共演など、伝統的なプレイに留まらず、新しい音世界へのチャレンジが印象的。

David Murray(デビッド・マレイ・写真右)。爆裂な最低音。何処までも伸びていくフラジオ奏法。演奏可能な全ての音を活かして表現するアヴァンギャルド・テナー。アルバート・アイラーに影響を受けたものだと評される。瑞々しく輝く様に鳴り響くビッグ・トーン。スピリチュアルでエモーショナルなブロウ。限りなく湧き出るイマジネーション。初めて聴いた時は度肝を抜かれた。
 

Morning_song

 
そんな、Ed Blackwell, John Hicks, Reggie Workman, David Murray という面子の名前をしげしげと眺めていると、叫ぶような、本能の赴くままのフリージャズが聴こえてきそうだが、意外とそうでは無いんですね。この『Morning Song』というアルバム全編に渡って、歌心をしっかりと押さえた演奏は、しっかりとした純ジャズです。面子の名前を見ただけの先入観は良くないですね。

基本的には、デビッド・マレイのワンホーン・カルテットの構成なので、やはりマレイのテナーが中心です。マレイのテナーのイメージとしては豪快に吹きあげる、エモーショナルなテナーという印象が強いのですが、このアルバムでは、しっかりと自らを抑制して、ブリリアントでリリカルなフレーズをそこかしこに見せつつ、ポイント、ポイントで一気に豪快に吹き上げるという、実にメリハリの効いた、硬軟自在なブロウを聴かせてくれています。マレイのムーティーでリリカルな面が垣間見られる好盤です。

珍しくレジー・ワークマンのベース・ソロとエド・ブラックウェルのドラム・ソロもしっかりと時間を与えられて収録されていて、実に興味深く、じっくりと聴くことが出来ます。アルバム全編に渡っては、リズム・セクションとして好サポート。ワークマンのベースもブラックウェルのドラムも、フロントのマレイと同様、しっかりと自らを抑制して、端正で骨太なバッキングを提供しています。

そうそうピアノのヒックスも、ブリリアントでリリカルな面が印象的。2曲目の「Body and Soul」でのマレイとのデュオでは、それはそれはリリカルで内省的なピアノを聴かせてくれます。これがヒックスとは最初、思いませんでした(汗)。有名な4曲目の「Jitterbug Waltz」でも、弾むようなブリリアントなバッキングを聴かせてくれていて、なんだか「可愛い」ヒックスです(笑)。

良いアルバムです。マレイのメインストリーム・ジャズ的テナーが十分に楽しめます。決してエモーショナルな演奏に走らず、限りなくフリーなブロウになりつつ、しっかりと伝統的なジャズの範疇にしっかりと軸足を置いたマレイのブロウは、なかなかに素晴らしい。

流石に、一癖も二癖もある面子でのカルテット演奏。良い意味で完全に期待を裏切られました。アルバム全編に渡って、歌心をしっかりと押さえた演奏は、しっかりとした純ジャズです。面子の名前を見ただけの先入観は良くないですね。

 

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Fight_3
 
がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。
 

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