日本のバイオリン・ジャズの名盤
バイオリン・ジャズ。純ジャズでは、ステファン・グラッペリ、フュージョンでは、ジャン・リュク・ポンティが浮かぶが後が続かない。絶対数が少ないのだ。日本では寺井尚子。希少価値である。デビューの頃は尖った純ジャズでならしていたが、最近はムード音楽化してきたので、なかなか手が伸びない。
それでも、寺井尚子のバイオリン・ジャズは、結構、僕のツボに入っていて、デビュー作以来、ほとんどのアルバムを所有している。でも、やはり、最近の寺井尚子のリーダー作は、完全にムード音楽化してきたので、どうしても触手が伸びない。
そんな中、寺井尚子のアルバムの中で、一番、バーチャル音楽喫茶『松和』でかかるアルバムは何か、と振り返って見たら、圧倒的に『NAOKO LIVE』(写真左)であることが判った。ちなみにパーソネルは、寺井尚子(vln)、Lee Ritenour(g)、Alan Pasqua(p)、Harvey Mason(ds)、Dave Carpenter(b)、Jochem Van Del Saag(syn)。2000年12月9日の録音になる。
この寺井尚子のライブ、寺井のバイオリン・ジャズの最高傑作と思っているが、それはそのはずで、バックのメンバーが凄い。ギターにリー・リトナー、ドラムにハービー・メイソン、ベースにデイブ・カーペンター。つまりは、バックのリズムセクションに、フュージョン・ジャズの錚々たるベテランが控えている。
つまりは日本人ジャズ・ミュージシャンでバックを固めなかったことが、このアルバムの成功を生んでいる。それほど、ジャズにおいて、バイオリンの音色は扱い難いものなんだろうな、ということが再認識される。哀愁を帯び過ぎた、マイナーすぎる、加えて、アブストラクトな音色が圧倒的に不得意な弦楽器である。如何にして、その「厄介な楽器」を効果的にサポートするかが「鍵」になる。
そう言う意味で、この『NAOKO LIVE』は、寺井尚子のバイオリン・ジャズのテクニックの高さもさることながら、そのテクニック溢れる寺井尚子のバイオリンを効果的にサポートする、バックのミュージシャンの演奏能力の高さが、このアルバムの成功を肝になっている。
冒頭のチック・コリアの名曲「Spain」などは絶品で、チックのスパニッシュな哀愁を帯びた印象的な旋律に、バイオリンの音色はピッタリである。しかも、簡単そうに見えてかなり難度の高いこの曲をしっかりとバックでサポートする名うてのフュージョン・ジャズの名手達。「Spain」のカバーの優れた成果のひとつといって良いでしょう。
2曲目の「Stolen Moments」は、この曲の持つ哀愁溢れるファンキーな旋律はバイオリンの音色にピッタリくるということを再認識させてくれるし、3曲目の「Black Market」は、このウエザー・リポートの名曲が、こんなに魅力的なバイオリン・ジャズに変身するとは思いもしなかった。アレンジの勝利である。
7曲目「Cantaloupe」〜8曲目「Tokyo-La Jam」〜9曲目「Rio Funk」の3曲の流れは、ファンキー・ジャズの大団円。バイオリンの哀愁溢れる音色は、なんとファンキー・ジャズにもフィットする。しかし、これもバック・バンドの力量あってこそ。このライブでは、寺井尚子はバックバンドに恵まれた。これだけ、寺井のバイオリンの長所を引き出すバックは他に無い。
その他の演奏曲も、ライブならではの躍動感と相まって、どれもが非常に優れた演奏になっていて、とにかく、最後まで聴かせてくれる。やっぱり、ジャズってライブやな、って思う。特に、ジャズにちょっと向かないかな、と思われる楽器ほどライブが良いと、このライブ盤を聴いていて、なんとなく思った。恐らくきっとそうだ。他のバイオリン・ジャズのアルバムを掘り下げてみる必要がありそうだ。
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こんにちは。
自分はグラッペリ、ポンティも好きですが、
レジーナ・カーター、ディディエ・ロックウッド、リック・サンダーも好きです。
(上記の人たちをジャズ・ヴァイオリニストと呼んでも大丈夫かなぁ。心配です)
寺井尚子さんは今まで真剣に聞いた事が無かったので、今度ブログで紹介されているLiveをきちんと聞いてみようと思います。
Spainが絶品と言う記載に心動かされました。
投稿: 蔵 | 2011年6月24日 (金曜日) 02時06分