梅雨の時期にピッタリのアルバム
今日、関東地方は梅雨入りした。平年より12日早い梅雨入りである。いやはや、僕は子供の頃から梅雨が嫌いで、鉛色のどんよりした雲を見ると、決まって憂鬱になる(笑)。
でも、梅雨を行き過ごさない限り、大好きな夏は来ないので、これはこれで仕方が無い。梅雨の長雨は大嫌いだが、冷静になって振り返ってみれば、梅雨の季節については、それはそれなりに風情がある。そんな、梅雨の情景にぴったりのジャズ・アルバムがある。
Steve Kuhnの『Remembering Tomorrow』(写真左)。アルバム・ジャケットを見ても、これは「梅雨の時期」にピッタリのアルバムである(笑)。しかし、こんな快曇な、絵に描いた様な鉛色の雨雲をアルバム・ジャケットに持ってくるだろうか。しかし、良く眺めていると、それはそれで風情があると思えてくる。さすがは、ECMレーベルの仕業である。
さて、スティーブ・キューンのピアノは、限りなく繊細で、限りなく美しい。汚れを知らない、ナルシストの様な美しさ。その美しい、湿った、陰影のある音で、冷静に、滑らかに語りかける。その音は、そぼ降る雨に濡れる、鮮やかな紫陽花の様な、凛とした雰囲気を漂わせる。湿ったクリスタルの様な、冷たさの中に、ほのかな暖かみを感じる、そんな個性的なキューンのピアノ。
そのキューンのこのアルバム、一曲目が、そもそも「The Rain Forest」、つまり「雨の森」。ドラムの音、シンバルの音が、「雨」を表し、その雨に煙る「森」の凛とした雰囲気、静寂感をピアノが表す。この雨の多い季節にぴったりの、まさに、印象派の風景画をみるような、限りなく美しい演奏。
続く曲も、陰影のある、クリスタルなピアノが、滑らかに響く。このアルバムを聴いていると、全編を通して「雨」を感じる。「雨」といっても、土砂降りの雨ではなく、冷たい雨ではなく、静寂の中、そぼ降る「暖かい雨」を感じる。
静寂の中、時にドラムの響きが、その静寂を破る。静寂な「雨のそぼ降る森」に、風が吹き抜け、雨の滴が、一斉に落ちてくるような、静寂を破るドラムの音。うねるようなベース。
自然の中の、雰囲気のうねりの様な、不安をかき立てる雨のうねりのようなベースのうねり。雨は、時には優しく、時には強く、降り続く。一時の、雨の休息。雨に濡れた静寂な森。雨雲がたれ込め、森がかすみ、時折、風に大きく揺れながら、時は過ぎていく。
このアルバムのレーベルであるECMは、ミュンヘンにある典型的な欧州のレーベルで、米国のレーベルとは違った、前衛的な、印象派的な、美的感覚に優れたアルバム、ミュージシャンが多い。かのキース・ジャレットもECMの看板ミュージシャンだし、パット・メセニーも、デビュー当時はECMだった。
今回、ご紹介した、キューンも、途中、別のレーベルに移った時もあるが、どちらかと言えば、ECMの花形ピアニストの感が強い。梅雨の雨の日には、このECMレーベルのアルバムが良く似合う。
子供の頃から梅雨が大嫌いなのですが、季節として感じれば、梅雨は梅雨で「また良し」。季節を感じることは、結構、大切なことです。そして、その季節にあったジャズというのも良いものです。
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