小粋でハード・バップなJM 『Hard Bop』
ジャズの世界には、ジャズ入門本やアルバム紹介本に挙がらない佳作は沢山ある。特に、ハード・バップ時代には「紹介されない佳作」が多々あるので、我々、アルバム収集家にとっては宝の山。
ジャズ者初心者の方々には、わざわざ、そんなジャズ入門本やアルバム紹介本に挙がらない、マイナーなアルバムを手に入れろとは言わない。でも、このマイナーなアルバム達の内容が、これまた「なかなか」だったりするのだ。
そんな小粋でハード・バップな佳作は、ブルーノートなど、ジャズの歴史に名を残したジャズ専門レーベルにゴロゴロしている。そして、意外にも、大手総合レーベルにも、ひっそりと、そんな小粋でハード・バップな佳作が潜んでいたりするから、ジャズは隅に置けない。
Art Blakey & The Jazz Messengersの『Hard Bop』(写真左)も、そんな小粋でハード・バップな佳作の一枚。しかも、初出は、当時、大手総合レーベルだった、コロンビア・レーベルからのリリースである。しかし、このアルバムは、ジャズ入門本やアルバム紹介本に挙がることは、ほとんど無い。
ちなみに、パーソネルは、Bill Hardman (tp) Jackie McLean (as) Sam Dockery (p) Spanky DeBrest (b) Art Blakey (ds)。録音時期は、1956年12月。盟友ホレス・シルバーと袂を分かった後のThe Jazz Messengersのスタジオ録音である。
このアルバム全体に漂うハード・バップな熱気が良い。演奏全体のレベルは決してハイレベルとは言えないところも見え隠れするんですが、ハード・バップな熱気が、そんな「アラ」を覆い隠してしまいます。
まず、若き日の、アルト・サックスのジャキー・マクリーンが絶好調。当時25歳。少しマイナーに外れた、ちょっと調子外れな、ストレートなブロウは、どこからどう聴いたって、マクリーンです。このアルバムでは吹きまくりです。疾走感溢れるマクリーン。素晴らしいです。
トランペットのビル・ハードマンも健闘しています。テクニック的には「ちょっとなあ」というところもあるんですが、同じフロントのマクリーンに煽られて、溌剌とペットを吹いているところは好感度アップ。
マクリーンとのユニゾンがなかなかハード・バップしているんですが、ところどころで、タイミングが合わなかったり、ピッチを外したりで、細かいことを言えば、いろいろあるんですが、まあ良いでしょう。熱気に免じて許してしまおう(笑)。
ピアノのサム・ドッケリーは、完全にバド・パウエルのスタイルを踏襲。ほとんどバド・パウエルそっくり。まあ良いでしょう。熱気に免じて許してしまおう(笑)。加えて、ベースのスパンキー・デブレストは・・・ちょっと目立ちません(笑)。ハード・バップな熱気溢れる演奏の中で、唯一、ベースが弱いかなあ。
リーダーのアート・ブレイキーは、もちろん絶好調。ナイアガラ・ロール全開、フロントを煽る「カカカカカ」も全開。バップなドラミングが炸裂しまくりです。とにかくフロントを煽る煽る。このアルバムに漂うハード・バップな熱気は、リーダーのブレイキーのドラミングに負うところが大きい。
そう言えば、タイトルからして「ハード・バップ」(笑)。1956年12月。ビ・パップからハード・バップへ急激に移行する激動の時代に生まれたアルバム。タイトル通りの「ハード・バップ」な醍醐味がギッシリ満載の佳作です。普段着で聴き流せる「小粋なハード・バップ」が心地良い。
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