永遠のフュージョン名盤『Gentle Thoughts』
「フュージョン」とは、ジャズを基調にロックやファンク、R&Bなどを融合させた音楽のジャンル。
1960年代後半より、電気楽器とロック風な奏法を導入した演奏スタイルである「ジャズ・ロック」から端を発し、1970年代に入って、「クロスオーバー」と呼ばれる、ストリングスやブラスのオーケストラのアレンジを織り交ぜたエレクトリック・ジャズとして発展。さらに、1970年代後半、ソフト&メロウの要素を取り入れ、「フュージョン」の演奏スタイルが確立した。
僕は、この「クロスオーバー」から「フュージョン」は、完全にリアルタイムで体験している。特に、フュージョンの時代は、ジャズを聴き始めた、ほやほやのジャズ者初心者。当然、判り易いフュージョンに飛びついたのは言うまでもない(笑)。
さて、ジャズを聴き始めた切っ掛けは、大学の友人の家に遊びに行った時に、ジャズのアルバムとフュージョンのアルバムを散々聴かされた事に始まる。確か、遠い記憶を辿ると、純ジャズは Modern Jazz Quartetと Bill Evans、フュージョンは Lee Ritenour & Gentle Thoughts。いや〜ビックリしましたね。当時、ロックにマンネリ感を感じていたので、直ぐに飛びついた。
もともと、ロックではプログレが大好きである。インストルメンタルは全く違和感が無い。しかも、ジャズはロックと比べて、演奏テクニック、演奏レベル共に高い。しかも、オフビートかつブルース基調。高校時代からFMでちょこちょこ聴いてはいたが、LPを数枚聴かされて、その音世界に心から感じ入った。
特に、ロックに親しんでいた耳には、フュージョンが直ぐに馴染んだ。Lee Ritenour & His Gentle Thoughts『Gentle Thoughts』(写真)を聴かせて貰ったのを覚えている。これが、まあ凄い演奏ですして、その演奏テクニック、演奏レベルに度肝を抜かれた。とにかく上手い。激しく上手い。しかも、バンド演奏が生み出すグルーブが「うねるうねる」。人間が演奏していたアナログチックな時代である。これが人間の演奏かいな、と唖然とした。
その超人的な演奏の主たち、ちなみにパーソネルは、Lee Ritenour(g)、Ernnie Watts(sax.fl.)、Patrice Rushen,Dave Grusin(key)、Anthony Jackson(b)、Harvey Mason(ds)、Steve Forman(per) からなる7人。今の目で見れば、米国西海岸の名うての超一流スタジオ・ミュージシャンが勢揃いである。そりゃあ上手いはずだ。
デイヴ・グルーシン作曲の「Captain Caribe」から、アース・ウインド&ファイアーの「Getaway」へと続く1曲目のメドレーで、もうノックアウト。「スゲーっ」の連発。ドスン、バスン、ドドンドンといった感じの、西海岸フュージョン独特のちょっとラフラフなリズム・セクションが何とも言えず良い感じ。
そして4曲目は Lee Ritenourのシンボルマーク的な名曲「Captain Fingers」。Lee Ritenourといえば、先ずはこの曲やね〜。イントロのスピード感溢れるカッティングは Lee Ritenour独特の個性。初めて聴いた時、どうやって弾いてんねん、と悩みました(笑)。爽快感溢れる演奏で、Lee Ritenour のエレギの個性が溢れんばかり。
「これぞLAフュージョン」って感じですが、ちなみにドラムのHarvey Mason、ベースのAnthony Jacksonのリズム・セクションはNYからLAに移ってきたメンバーなので、ミュージシャンの出身地には関係無いですね。このラフラフなリズム・セクションと爽快感溢れる演奏トーンが「LAフュージョン」と呼ばれる所以ではないかと思っています。
言わずもがなですが、リーダーのLee Ritenourのエレギは、今の耳で聴いても良いですね〜。特に、この頃のプレイは、はち切れんばかりの若さ溢れ、キラキラ輝く様で、とにかく溌剌と弾きまくっている。ラリー・カールトンと並んで人気フュージョン・ギタリストの双璧でした(今でもそうだけど)。
ちなみに、このアルバムは当初、当時流行した「ダイレクト・カッティング方式」なる方法により録音されています。この「ダイレクト・カッティング方式」は、オーバーダビング等による音質劣化を避けるために、演奏と同時にマスター・ディスクの溝を刻んでいく方法です。
当然、演奏は一発録り。どころか、LPのA面・B面それぞれの収録曲を通しで演奏しなければなりません。ミキシング等も後でやり直すことも出来ず、演奏する方も録音する方も大変だったと思います。この「ダイレクト・カッティング方式」の話を雑誌で読んだ時、心底「あほかいな」と良い意味で呆れたことを思い出します。
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