マイルスの『At Newport 1958』
マイルス・デイヴィスはスタジオ録音盤とライブ録音盤では、その時代時代でギャップがあるので注意が必要である。
新春早々、1月4日のブログ(左をクリック)でご紹介した『Kind Of Blue』。当時のジャズ、ハードバップの先にある、新たなジャズの発展形を指し示したもの。所謂、モード・ジャズのブロトタイブである。ジャズが大衆音楽としてだけでなく、音楽芸術としても成立することを証明した大名盤である。
『Kind Of Blue』収録時のパーソネルが、Miles Davis (tp) Cannonball Adderley (as) John Coltrane (ts) Wynton Kelly (p) Bill Evans (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds)。モード・ジャズを演奏するという範疇には、Wynton Kellyは入らないので、Wynton Kellyを除いた6名が、この大名盤に関与したジャズメンとなる。
この栄光の6名のジャズメンがライブをすると「どうなるか」。『At Newport 1958』(写真左)。もちろん、マイルス6重奏団のライブである。収録が1958年7月。『Kind Of Blue』が1959年3月の収録なので、『Kind Of Blue』の約半年前のライブになる。
あのモード・ジャズのプロトタイプ、大名盤の『Kind Of Blue』の約半年前となれば、当然、この『At Newport 1958』では、モード・ジャズの萌芽を聴くことができるのでは、と期待感は高まる。
が、モード・ジャズの欠片も無い。とは言い過ぎで、ピアノのビル・エバンスだけが、モードチックなピアノ・ソロを聴かせてくれている。さすがである。音符を並べまくることなく、基音をベースに幽玄かつスペースを活かしたソロは、一聴しただけで、ビルと判るソロは、さすがビル・エバンスである。
他のメンバーは、全くその気無し。モードの微塵も無い。コルトレーンは全く持って我が道を行く、である。高速シーツ・オブ・サウンドで吹きまくる。他のメンバーの音を聴きながら、協調して演奏する、という雰囲気の全く無いコルトレーンは「浮いている」。
アルトのキャノンボールも吹きまくっているものの、コルトレーンに追従する訳にもいかず、といって、モードも判らんし、俺は俺かな〜と悩んでいる内に、自分の枠が終わっちゃった感じの、ちょっと不完全燃焼なソロに終始。
このライブ盤全編を通じて、なんだか、やたら元気なのが、ドラムのジミー・コブ。確かに当時のハードバップ・ドラミングの標準とは異なる、やがてやってくる「モーダルなドラミング」の萌芽が聴き取れる。ちょっとビックリ。それまで、なぜ、マイルスがジミー・コブをチョイスしたのか、理解出来なかったのだが、このライブ盤を聴いて判った。さすがマイルスである。
このライブ盤は、どこに評価軸を置くかで、大きく評価は変わるだろう。メンバーを見て、これだったらどんな演奏でもOKという聴き方もあるし、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドだけを聴けば、それはそれでOKという聴き方もあるだろうが、僕は、このライブ盤はあまり評価していない。
ハード・バップのライブとしては、グループ・サウンドの観点で内容が荒く、それぞれのソロがあまりに唯我独尊でバラバラ。マイルスはテーマ部を中心に、ププッと吹いているだけ(それでも、マイルスのミュート・プレイは絶品だが)。印象的でロングなインプロビゼーションを聴くことは出来ない。まあ、マイルスが一番「スカしている」時代のライブやからね。マイルスの当時の実力を出し惜しみしているのが残念やな〜。
アルバム・ジャケットのマイルスの写真も「う〜ん」と唸りを上げてしまうほど、不思議な写真を採用しています。やる気無いやろ、と突っ込みたくなる。ただし、最新のリマスターCDは音質は良好。ちなみに、この『At Newport 1958』は、LP時代は、セロニアス・モンクのライブとカップリングしたアルバムで、タイトルは『Miles And Monk At Newport』でした。
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