実にクールなジャズ・オルガン
ジャズ・オルガンと言えば、コテコテ・ファンキーな、粘っこく黒くジャジーな音色を思い浮かべる。
ジャズ・オルガンの巨匠ジミー・スミスを筆頭として、このコテコテ・ファンキーな、粘っこく黒くジャジーな音色は、正統なジャズ・オルガンの印。ベイビー・フェイス・ウィレット然り、フレディ・ローチ然り、ビッグ・ジョン・パットン然り、ロニー・スミス然り。現在の日本代表、敦賀明子も、粘っこく黒くは無いがこの系統。
しかし、この正統なジャズ・オルガンの印の真逆を行くジャズ・オルガニストがいる。サム・ヤエル(Sam Yahel・写真右)である。実にクールなジャズ・オルガンである。クールと言っても「格好良い」という意味でのクールでは無い。冷静な、静的な意味での、ホットの逆の意味での「クール」である。
サム・ヤエルのジャズ・オルガンは、決して、コテコテ・ファンキーでは無い。黒くジャジーではあるが、粘っこくは無い。サラリとスマートで、黒くジャジーではあるが、ファンキーさは「かなり希薄」。しかし、スピード感が溢れ、メリハリがばっちり効いている。ジャズ・オルガンの王道の真逆を行く、サム・ヤエルのオルガンである。
そのサム・ヤエルが、テナーのジョシュア・レッドマン(Joshua Redman)、ドラムのブライアン・ブレイド(Brian Blade)と組んだトリオがる。3人対等の立場のバンドだが、実質上のリーダーはサム・ヤエル。その3人が2002年に発表したアルバムが『yaya3』(写真左)。ちなみに「yaya3」は「ヤ・ヤ・キューブド」と読むとのこと。「キューブド(cubed)」は数字の3乗の意。サックス+ドラム+ハモンド・オルガンという、実にユニークな編成のトリオである。
このトリオの演奏が実に「クール」。ここでの「クール」は「格好良い」の意(ややこしいなあ)。このオルガン・トリオの演奏は、「クール」という言葉が実に相応しい演奏である。3者3様、実に「格好良い」。理屈はいらない。とにかく、音を聴いていると、演奏を聴いていると、「く〜かっこええなあ」という感じが心の底から沸き上がってくる。
サラリとスマートで、黒くジャジーではあるが、ファンキーさは「かなり希薄」。しかし、スピード感が溢れ、メリハリがばっちり効いている。ジャズ・オルガンの王道の真逆を行く、サム・ヤエルのオルガンは、伴奏に回ると、その真価を最大限に発揮する。
ジョシュア・レッドマンのテナーのバックで、ジョシュアのテナーとぶつかることなく、ジョシュアのテナーの音の合間、隙間を埋めつつ、ジョシュアのテナーのソロを浮き立たせていく。これが、とにかく絶妙なのだ。相性が良い、というのはこういうことを言うのだろう。
サックスとオルガンが互いに触発しながら、相互に影響しあいながら、それぞれの個性を発揮しつつ、実にクールなインタープレイを展開していく。実に柔軟で実に理知的なインタープレイにゾクゾクする。そんなゾクゾクするようなサックスとオルガンのインタープレイを、ブライアン・ブレイドの、これまた「格好良い」ドラミングが、ガッチリとサポートする。
ブライアン・ブレイドのドラミングも、ハイテクニックで手数が多いが、決して、サックスとオルガンのインタープレイを邪魔したりしない。それどころか、サックスとオルガンのインタープレイを煽り、励まし、盛り立てる。このブライアン・ブレイドのドラミングも、このアルバムの聴きどころ。
すっごくクールなトリオ・ジャズです。発売当時、偶然、CDショップで手にして以来、長年の愛聴盤です。ほとんど何も無いところからのインプロビゼーション中心の積み上げなので、演奏内容はかなり抽象的ですが、演奏の芯はシッカリ通っているので、決して飽きません。というか、聴き込めば聴き込むほど、その都度いろいろな発見があって、なんというか、スルメの様なアルバムですね。噛めば噛むほど味が出る(笑)。お後がよろしいようで・・・。
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