« ジャズ喫茶で流したい・23 | トップページ | 英国の70年代フュージョン 『Bundles』 »

2010年12月20日 (月曜日)

実にクールなジャズ・オルガン

ジャズ・オルガンと言えば、コテコテ・ファンキーな、粘っこく黒くジャジーな音色を思い浮かべる。

ジャズ・オルガンの巨匠ジミー・スミスを筆頭として、このコテコテ・ファンキーな、粘っこく黒くジャジーな音色は、正統なジャズ・オルガンの印。ベイビー・フェイス・ウィレット然り、フレディ・ローチ然り、ビッグ・ジョン・パットン然り、ロニー・スミス然り。現在の日本代表、敦賀明子も、粘っこく黒くは無いがこの系統。

しかし、この正統なジャズ・オルガンの印の真逆を行くジャズ・オルガニストがいる。サム・ヤエル(Sam Yahel・写真右)である。実にクールなジャズ・オルガンである。クールと言っても「格好良い」という意味でのクールでは無い。冷静な、静的な意味での、ホットの逆の意味での「クール」である。

サム・ヤエルのジャズ・オルガンは、決して、コテコテ・ファンキーでは無い。黒くジャジーではあるが、粘っこくは無い。サラリとスマートで、黒くジャジーではあるが、ファンキーさは「かなり希薄」。しかし、スピード感が溢れ、メリハリがばっちり効いている。ジャズ・オルガンの王道の真逆を行く、サム・ヤエルのオルガンである。

そのサム・ヤエルが、テナーのジョシュア・レッドマン(Joshua Redman)、ドラムのブライアン・ブレイド(Brian Blade)と組んだトリオがる。3人対等の立場のバンドだが、実質上のリーダーはサム・ヤエル。その3人が2002年に発表したアルバムが『yaya3』(写真左)。ちなみに「yaya3」は「ヤ・ヤ・キューブド」と読むとのこと。「キューブド(cubed)」は数字の3乗の意。サックス+ドラム+ハモンド・オルガンという、実にユニークな編成のトリオである。

このトリオの演奏が実に「クール」。ここでの「クール」は「格好良い」の意(ややこしいなあ)。このオルガン・トリオの演奏は、「クール」という言葉が実に相応しい演奏である。3者3様、実に「格好良い」。理屈はいらない。とにかく、音を聴いていると、演奏を聴いていると、「く〜かっこええなあ」という感じが心の底から沸き上がってくる。
 
  
Yaya3
 
     
サラリとスマートで、黒くジャジーではあるが、ファンキーさは「かなり希薄」。しかし、スピード感が溢れ、メリハリがばっちり効いている。ジャズ・オルガンの王道の真逆を行く、サム・ヤエルのオルガンは、伴奏に回ると、その真価を最大限に発揮する。

ジョシュア・レッドマンのテナーのバックで、ジョシュアのテナーとぶつかることなく、ジョシュアのテナーの音の合間、隙間を埋めつつ、ジョシュアのテナーのソロを浮き立たせていく。これが、とにかく絶妙なのだ。相性が良い、というのはこういうことを言うのだろう。

サックスとオルガンが互いに触発しながら、相互に影響しあいながら、それぞれの個性を発揮しつつ、実にクールなインタープレイを展開していく。実に柔軟で実に理知的なインタープレイにゾクゾクする。そんなゾクゾクするようなサックスとオルガンのインタープレイを、ブライアン・ブレイドの、これまた「格好良い」ドラミングが、ガッチリとサポートする。

ブライアン・ブレイドのドラミングも、ハイテクニックで手数が多いが、決して、サックスとオルガンのインタープレイを邪魔したりしない。それどころか、サックスとオルガンのインタープレイを煽り、励まし、盛り立てる。このブライアン・ブレイドのドラミングも、このアルバムの聴きどころ。

すっごくクールなトリオ・ジャズです。発売当時、偶然、CDショップで手にして以来、長年の愛聴盤です。ほとんど何も無いところからのインプロビゼーション中心の積み上げなので、演奏内容はかなり抽象的ですが、演奏の芯はシッカリ通っているので、決して飽きません。というか、聴き込めば聴き込むほど、その都度いろいろな発見があって、なんというか、スルメの様なアルバムですね。噛めば噛むほど味が出る(笑)。お後がよろしいようで・・・。
 
 
  
★Twitterで、松和のマスターが呟く。検索で「松和のマスター」を検索してみて下さい。名称「松和のマスター」でつぶやいております。
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

« ジャズ喫茶で流したい・23 | トップページ | 英国の70年代フュージョン 『Bundles』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 実にクールなジャズ・オルガン:

« ジャズ喫茶で流したい・23 | トップページ | 英国の70年代フュージョン 『Bundles』 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー