秋が深まると聴きたくなる
今年の秋の天気は最悪。このところの朝の天気は、ほどんど雨か曇天の我が千葉県北西部地方。う〜ん、かなりストレス感じてます。
それでも、やっぱり秋が深まると、毎年聴きたくなるジャズメンのアルバムがあります。柔らかで円やかな、それでいて、しっかりと芯のあるアルト・サックスを聴かせてくれる。そう、ポール・デスモンド(Paul Desmond)のリーダー作が聴きたくなるんですよね。
ポール・デスモンド。1924年米国生まれのアルトサックス・プレイヤー。1940年代、ピアニストのディブ・ブルーベックと知り合い、Dave Brubeck Quartetを結成。ジャズのスタンダードとなった変則拍子ジャズ「Take Five」の作曲者として広く知られている。デスモンドは、ディブ・ブルーベックのバンドと並行して行ったソロ活動でも素晴らしい楽曲・演奏を残している。
その代表的なリーダー作が、ジム・ホールとのコラボ。基本編成が、Paul Desmond (as) Jim Hall (g) Eugene Cherico (b) Connie Kay (ds) のピアノレス・カルテット構成。デスモンドのソロ・リーダー作が、ピアノレスというところにデスモンドの思いやりと戦略性を感じる。
ここでピアノを採用すると、どうしても、ディブ・ブルーベックとのバンドと比較されて、なにかとややこしい。サックス奏者はピアノの存在について「痛し痒し」みたいなんだが、ここはきっぱりとピアノと訣別して、ギターを選択しているデスモンドの戦略性は素晴らしいものがある。
そして、そのギターに、ジム・ホールを採用しているところにも、デスモンドの深慮遠謀を感じる。ジム・ホールのギターの個性は、デスモンドのアルトと同様、柔らかで円やかな、それでいて、しっかりと芯のある音がジム・ホールのギターの個性。
つまりは、デスモンドのアルトとピッタリの個性。そこに、職人ドラムのコニー・ケイが絡み、オイゲン・キケロの正統派ベースがビートを供給する。かなり練られたバンド・メンバーの人選。デスモンドの矜持を感じる人選である。
そのデスモンドのソロ作で、一番良く聴くアルバムが『Take Ten』(写真左)。かの有名な「Take Five」の続編となる、変則拍子ジャズ、冒頭の「Take Ten」がタイトル曲。「Take Five」ほど、ゴツゴツとスクエアなフレーズでは無い、流麗なフレーズが心地良い。
デスモンドのアルトは、やれイージーリスニングだとか、やれムード音楽だとか、心無い評論が以前良く見られたが見当違いも甚だしい。柔らかで円やかな、それでいて、しっかりと芯のあるアルト・サックスの奥に見え隠れする「アンニュイな」表情にグッとくるのだ。健康的にイージーリスニングしているのでは無い。物憂げな、さらりとした諦念感に似たニュアンス。これが、深まる秋の「夜の静寂」にピッタリなのだ。
収録されたどの曲もデスモンドのリーダー作としては良い出来だが、特に、3曲目の「Alone Together」、5曲目の「Theme from "Black Orpheus"(「黒いオルフェ」テーマ)」、そして、7曲目の「Samba de Orfeu(オルフェのサンバ)」が良い。特に、デスモンドのアンニュイなアルトには、硬派なボサノバのカバーが良く似合う。
デスモンドのアルトは実にセンスが良い。その優れたセンスを支えるジム・ホールのギター、そして、オイゲン・キケロのベース、コニー・ケイのドラムが、デスモンドの、柔らかで円やかな、しっかりと芯のある、それでいて、どこかそこはかとなく「アンニュイな雰囲気」漂う、個性溢れるアルト・サックスをしっかりと支える。
良い演奏だ。心地良く、しっかりと癒される。深まる秋の「夜の静寂」にピッタリのデスモンドのソロ・リーダー作。ポール・デスモンドは、深まる秋から冬にかけて、毎年、僕のヘビーローテーションになるジャズメンの一人です。
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