懐かしの「ガッド・ギャング」
さすがに寄る年波に勝てないのか、スティーブ・ガッドの衰えが目立つ。基本的にはパワーで押すドラマーなので、力を抜いての「小粋な」ドラミングに移行するには無理がある。
もう、あの縦ノリのデジタルなパワードラミングは聴くことができないのか、とちょっと淋しい気分にドップリな時に、ガッドの新しいアルバムがリリースされた。今年の7月、スティーブ・ガッドがリーダー名義のライブ盤『Live at Voce』(写真左)。邦題は単純に『ガッド・ライヴ!』。これでは面白くも何ともない。日本のレコード会社の、ガッドに対する気合いの無さが良く判る邦題である(笑)。
さてさて、この『Live at Voce』であるが、2009年11月17日、アリゾナのVoce Restaurant でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Steve Gadd(ds), Joey Defrancesco(Hammond B3, tp), Ronnie Cuber(bs), Paul Bollenback(g)。
ガッド・ギャング時代からの盟友、バリトン・サックスのロニー・キューバが懐かしい。そして、ジョーイ・デフランセスコのオルガンが、どこまでガッドとの相性を感じさせてくれるのか、加えて、ポール・ボーレンバックのギターはどうなのか。このパーソネルを見ると、今までに無い、新しい音世界を体験することが出来るのではないか、という期待感がふつふつ湧いてくる。
さて、このライブ盤、ジャズやR&Bの懐かしいスタンダード曲を演奏しているので、はたまた、ガッド・ギャング時代の手慣れた曲を結構演奏しているので安定感がある。特に、ガッド・ギャング時代の演奏曲では、さすがにバリトン・サックスのロニー・キューバが活き活きと演奏している。フュージョンのオールドファンとしては、懐かしの「ガッド・ギャング」である。
このライブ盤を聴き通して思うのは、やっていることは、ガッド・ギャング時代の演奏の雰囲気とほとんど変わらない。R&Bを基調としたシンプルなフュージョン路線が基本である。それでも、4ビート基調曲が半分ぐらいあって、ライブ全体の演奏の雰囲気はフュージョンっていう感じではない。ライトなコンテンポラリー・ジャズって感じかな。
ジョーイ・デフランセスコのオルガンはシンプルな響きで、オルガン独特の「こてこてファンキー」な雰囲気は全く無い。「こてこてファンキー」というよりは、あっさりとしたフラットな響きの中に、そこはかとなくファンキーな雰囲気がうっすらと漂うって感じかな。それでいて、紡ぎ出すフレーズは鋭角で先鋭的な響きを宿しており、ジョーイ・デフランセスコのオルガンは、実にプログレッシブな響きが特徴。ジャズ・オルガンにもいろいろあって楽しい。
主役のスティーブ・ガッドのドラミングと言えば、なかなかに健闘していると思います。懐かしの「ガッド・ギャング」の雰囲気を踏襲しているので、実にリラックスして楽しそうにドラムを叩いている様子が感じられて微笑ましいですね。さすがにリーダー作なので、ドラミングの見せ場はそこここに感じられるし、4ビート部分のバッキングも往年の雰囲気を醸し出していて、実に格好良い。
バリトン・サックスのキューバも、ライブだけあって、豪放磊落、バリサクを吹きまくって、それはそれは豪快極まりないし、フランセスコはどの曲も終始ノリノリに弾きまくって良い感じ。僕はあまり良く知らなかったが、ギターのボーレンバックも、場面場面で効果的にR&B的なフレーズを繰り出しながらも、基本的には、正統派スウィンギーなギターが良い感じ。
最近のスティーブ・ガッドとしては、なかなかの内容のライブ盤だと思います。音的には、キューバのバリトン・サックスとスティーブ・ガッドのバスドラ、デフランセスコのオルガンのベース音、と低音が「肝」のライブなので、このライブ盤の音は、低音の響きが「キー」です。低音がしっかり出せる、まずまず以上のステレオ装置で聴くことをお勧めします。低音がしっかり出ないと、アルバム全体の音が細る感じになって、ちょっと不満が出たりします。
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