美しきフラグメンツ・4
マイルス・ディヴィスが、黒人ボクサー、ジャック・ジョンソンをテーマとした映画のサントラのコンプリートBOX。10月20日以来、今日は4回目。『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 4]』のお話しを・・・。
『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 4]』は、ドラムやパーカッションが無い、若しくは、あっても、必要最低限のシンプルなビートのみの演奏フラグメンツばかりが集められている。これがまさに絶品のフラグメンツばかりなのだ。
ドラムやパーカッションが無い演奏でビートを供給するのは「ベース」。ベースのスローなビートだけで、マイルスバンドのフロントは、それはそれは、プログレッシブで幽玄なソロを展開してみせる。それだけでは無い。印象的なフレーズを重ねた、それだけで十分アルバムに収録するに値する演奏フラグメンツが「てんこ盛り」。
ベースすら無いフラグメンツもある。それでも、フロント楽器の演奏は、プログレッシブなキーボードは、しっかりと音のない、聞こえないビートに乗って、それはそれは素晴らしいインプロビゼーションを展開する。このセッションのメンバーは凄い。まさに、マイルスの意志を十分に理解した、素晴らしいフロントである。
必要最低限のシンプルなビートのみの演奏フラグメンツでは、それはそれは、本当に必要最低限のシンプルなビートのみ。それでも、しっかりとビートを供給する、このリズム・セクションは凄い。数少ない音数で、限りなくシンプルにビートを供給する。ここでも、マイルスの意志を十分に理解した、素晴らしいリズム・セクションである。
キーボードのソロもある。このソロは凄い。フェンダー・ローズを弾き倒して、ここまで捻れた、プログレッシブで攻撃的なキーボードは他にない。ロックにも無い。というか、ロックのキーボード奏者は消し飛んでしまう位の、凄まじいばかりのプログレッシブでフリーなエレピのソロ。チックの才能はいかばかりか。とにかく凄い。
この『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 4]』の演奏フラグメンツは、このセッションのメンバーのポテンシャルと、このメンバーの統一感、そしてマイルスの秀逸なリーダーシップとコンダクトが光る、当時のジャズ、いや今を持っても、このセッションの演奏フラグメンツの内容を凌駕する演奏は、なかなか見当たらない。
ドラムやパーカッションが無い、若しくは、あっても、必要最低限のシンプルなビートのみの演奏フラグメンツばかりが集められているからといって、聴くに値しない演奏フラグメンツの集まりだろうと思うのは間違いである。このCDに詰め込まれた演奏フラグメンツの演奏内容は、実に「濃い」。演奏フラグメンツだけで一枚のアルバムが出来てしまうくらいの、濃い内容がてんこ盛りである。
それそれのフラグメンツの演奏内容は、そこかしこに現代音楽の要素が織り込まれ、現代クラシックに匹敵する演奏展開が素晴らしい。マイルスは「芸術音楽」の天才であり、「大衆音楽」のパフォーマーではない、ということがこの『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 4]』を聴いていて良く判る。マイルスは芸術家であり、大衆音楽家では無い。
「ジャズはビートが命」そして「ジャズはクールでなければならない」というマイルスの哲学が十分に理解出来る演奏フラグメンツがギッシリ詰まった『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 4]』。どういう基準でこれらのフラグメンツを選んだのか良く判らない、などと、したり顔で、つまらない御託を並べるよりは、まずは、このCDに詰まっている演奏フラグメンツを聴き、何かを感じるべきだ。
「経験は理屈に勝る」そして「理屈を並べる前に聴け」。そんな格言が頭に浮かんでは消える『The Complete Jack Johnson Sessions [Disc 4]』。これだけ内容のある演奏フラグメンツである。聴かず嫌いは勿体ないと思います。
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