東海岸フュージョンのナベサダ
1970年代後半、日本のフュージョン界、いや、世界のフュージョン界を席巻した「ナベサダ」。振り返れば、その最初の一枚が『My Dear Life』。1977年の録音。この『My Dear Life』から、ナベサダ・フュージョンの快進撃が始まる。
1978年の『California Shower』。このアルバムは、デイブ・グルーシンのアレンジの下、米国西海岸のフュージョン畑から、名うてのミュージシャンばかりを集めた、さしずめ、米国西海岸オールスター・フュージョンの雰囲気である。適当にラフで、余裕のある、懐深いユッタリとした横ノリが、ちょっと長閑でノンビリしていて、それでいて重量感がある。僕にとって、米国西海岸フュージョンをしっかりと体験出来た最初のアルバムである。
そして、1979年には、米国西海岸を後に、米国東海岸に「ひとっ飛び」。今度は、米国東海岸のフュージョン畑から、名うてのミュージシャンばかりを集めた、さしずめ、米国東海岸オールスター・フュージョンの雰囲気。そのアルバムとは、渡辺貞夫『Morning Island』(写真左)である。
ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as,fl,sn) , Dave Grusin (p, el-p,per) , Jeff Mironov (g) , Francisco Centeno (el-b) , Steve Gadd (ds) , Rubens Bassini (per) , Eric Gale (g) with Brass and Strings。デイブ・グルーシンのアレンジは前作と同じ。ギターのジェフ・ミロノフ、エリック・ゲイルが目を惹く。う〜ん、米国東海岸フュージョンのギターやねえ。そして、ドラムは、スティーブ・ガッド。このスティーブ・ガッドのドラミングが、このアルバムの全てを担っていると言っても良い。
このアルバムで、初めて、スティーブ・ガッドのドラミングを体験した。初めて聴いた時は「なんじゃこりゃー」である。当時、フュージョンはジャズのジャンルに属する。ビートは、もちろん「オフビート」で横ノリ。うねるように粘るようにスインギーなビートが基本である。8ビートを採用しようが、16ビートを採用しようが、基本は「オフビート横ノリ」。
が、スティーブ・ガッドのドラミングは全く違う。もちろん、当時、フュージョンはジャズのジャンルに属している。ビートはもちろん「オフビート」なんだが、ガッドのドラミングが叩き出すビートは「縦ノリ」なのだ。パルシヴに縦に伸びて飛ぶように「オフビート」が縦に揺れる。スインギーに横揺れしない。ファンキーに縦揺れするのだ。しかも、デジタルっぽく、パルシヴに、ビット列のように、2進法の様に「オフビートに縦ノリ」する。初めて聴いた時は「なんじゃこりゃー」である。
最初は全く受け付けなかったが、聴き進めていくうちに「癖になる」。従来の「横ノリ」よりも、ファンキーで、ちょっと洒脱でアーバンな雰囲気がする。この『Morning Island』全編に渡って感じることが出来る、粘らずにサラッとしたファンキーさの源は、このガッドのドラミングによるものと睨んでいる。
さすがにニューヨークでの録音である。アーバンで小じゃれた雰囲気の「大人のフュージョン・ジャズ」が満載。都会風にやや「すかした」様な、ちょっと洒脱でアーバンな雰囲気がアルバム全体を覆っている。加えて、ナベサダさんのフルートが、その雰囲気を増幅する。米国東海岸ならではのアーバンな洗練された雰囲気が、黒くなり過ぎない、粘らずにサラッとしたファンキーさが、米国東海岸を、ニューヨークという土地柄を強く感じさせてくれる。
ニューヨークを強く感じさせてくれる、フュージョン・ジャズの名盤の一枚。ジャケット写真も全くの「ニューヨーク」。誰が見たって「ニューヨーク」。ナベサダさんの笑顔の後方に、クライスラービルが見える(笑)。なんて判り易いジャケット・デザイン。これ、味のある笑顔のナベサダさんだから絵になる訳で、他のミュージシャンだったらこうはいかないだろう。ある意味、危険なジャケット・デザインである(笑)。
カリプソ風のリズムに爽やかなフルートが優しい旋律を奏でて、ガッドの縦ノリドラムがビートをガッチリ支える。冒頭のタイトル曲「Morning Island」は、僕たちの世代の方であれば、どこかできっと耳にしているはずだ。
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